« 冷房なしで過ごせるか | トップページ | 『海を抱いて月に眠る』に心揺さぶられる »

2018年7月29日 (日)

オゾンの新しい仕掛け

フランスのフランソワ・オゾン監督は、毎回違った手法を見せて楽しませる。8月4日公開の『2重螺旋の恋人』は何を繰り出してくるかと思ったら、双子の両方を好きになる女を主人公にしたサスペンス・ホラーだった。

最初に長い髪を切る女性が写る。それから何と女性のあの場所のアップ。あくまで病院のカメラに写るものだが、それにしても。クロエは原因不明の腹痛をかかえ、医者に通う25歳。

結局そこで精神科医を勧められて、ポールのもとに通いだす。治療は彼女が一方的に話すだけだが、彼女の心はほぐれ、見違えるほど美しくなる。

治療が終わって2人は同居を始めるが、ある日クロエはポールにそっくりの男を見つける。その男はポールの双子の兄ルイで彼も精神科医だった。ルイは穏やかなポールと違い攻撃的だったが、クロエはなぜかルイのもとに通い始めて関係を持つ。

そこから双子の異常な関係や過去、そしてクロエ自身の抱える過去が蘇り、とんでもない話になる。あまりにあっと驚く展開なので、時々夢かと思うくらい。実際にありえないシーンも挟み込まれるので、まさに夢と現実が混じり合う感じ。

かなりエロチックな恋愛ものでありながら、ミステリアスなサスペンスタッチ。これが終盤には目を覆いたくなるようなホラーにも変わる。最初から最後まで観客を身体的に揺さぶりながら、終わると「ああ、映画なんだ」「映画だから何をやってもいいんだ」と思わせる。

まさに才人オゾンが人間心理をピンセットで扱ったような怪作と言えるだろう。かつてオゾンの『17歳』に出たマリーヌ・ヴァクトの神経質な言動と痩せた裸がよかったし、彼女の母親役(ともう1人の二役)で、ジャクリーン・ビセットがまだ美しい姿で出ていたのも嬉しかった。

やはり、オゾンは毎回さまざまな工夫を凝らしてそれを成功させる映画の職人だと思う。

|

« 冷房なしで過ごせるか | トップページ | 『海を抱いて月に眠る』に心揺さぶられる »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: オゾンの新しい仕掛け:

« 冷房なしで過ごせるか | トップページ | 『海を抱いて月に眠る』に心揺さぶられる »