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2018年7月27日 (金)

『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』に驚く

湯浅弘章監督の長編商業映画デビュー作『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』を映画館で見て、その才能のきらめきに驚いた。監督は39歳でこれまで短編などで受賞歴も多いが、今年一番の「新人」ではないか。

なぜ見に行ったかと言えば、朝日、日経、毎日、読売の4紙の映画評で大きく取り上げられていたから。さすがに新聞記者はきちんと映画を見ていると、改めて感心した。

内容は最近多すぎる女子高生ものだが、違うのは吃音の女子が主人公であること。映画の題名通り、志乃は高校に入学後の自己紹介で、自分の名前がうまく言えない。吃音で、言葉が出るまでに時間がかかってしまうのだ。彼女はお昼の弁当も、独り言を言いながら一人で食べている。

志乃がふとしたことから仲良くなるのが、歌が下手なのにバンドをやりたい加代。彼女もクラスでは浮いた存在だった。加代のギターに合わせて志乃が歌うと、不思議と調和が生まれた。最初は加代の家で、だんだんと外に出て2人は練習をする。

舞台は沼津市。教室の窓から海が見える環境で、彼女たちは海辺や大きな川にかかる橋や商店街で歌いだす。真夏の風と光に包まれて楽しそうに歌う2人のシーンが息を飲むほど美しい。地方都市のよどんだ空気と溢れる自然の中に、不器用に生きる2人の声と音が鳴り響く。

加代は「シノカヨ」というバンド名で秋の文化祭に出ようと提案する。そこにもう一人、クラスでみんなに相手にされない男子が加わる。てっきりこの3人で文化祭で盛り上がって終わりかと思ったら、志乃の繊細な心は男子の闖入に耐え切れない。

そして文化祭が来て、志乃は思わぬ行動に出る。これがまたうまい。志乃役の南沙良と加代役の蒔田彩珠は共に初主演だが、実際の年齢も今年16歳のせいか痛々しいほどに等身大の高校生を演じている。その分、高校の先生や志乃の母親や彼女たちを見守る掃除のおじさん(渡辺哲)は少し定型に収まり過ぎた感じも。

とにかく志乃と加代が路上で歌う場面だけで、この映画を見る価値がある。

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