エルメスの「彼女と。」を見る
実は、ファッション・ブランドが好きだ。それぞれが自分の世界を構築しているのを見るのは楽しい。実際にはまず買わなくても、ヨージ・ヤマモトやイッセイ・ミヤケの服が店に並んでいると、心が躍る。
欧米のブランドは、よく美術展をやる。エルメスの銀座店はゴリゴリの現代美術展を続けているし、銀座のシャネルも展覧会場がある。昔はアニエス・ベーもよく展覧会をやっていた。
今回、エルメスが国立新美術館で映画の展覧会をやると聞いて、見たいと思った。新美はイッセイ・ミヤケの展覧会がすばらしかったし、ほかにもファッションをテーマにした展覧会があった。一応大学で映画を教えているので、エルメスが映画をテーマに展覧会をするとなれば、見ておきたい。
入場は無料だが、要ネット予約。行ってみて驚いたのは、男性はほとんどいないこと。「彼女と。」AVEC ELLEと書いてあるから、彼女連れの男が多いかと思ったら、多くは2人組の女性たちだった。たまに奥さんに連れられたオヤジがいたくらい。
見た、というか参加した結論から言うと、たわいのないお遊びだった。最初に若い女性が出てくるイメージ映像を見せられて、「作家」が彼女について友人や恋人や隣人を訪ねる場面の撮影やリハーサルのシーンに立ち会う。つまりは太秦の映画村のように、ちょっとだけ映画の撮影現場を覗く感じ。
私は「エキストラ」の枠だったが、「作家」も一般客からの応募。用意されたセリフを読む。そしてファッション・モデルのようなスタッフが一緒に演じる。黒服を来た監督や撮影や録音などのスタッフもいる。
そもそも素人の「作家」が「謎の彼女」について他人に聞くという設定が陳腐だし、バイトのクルーたちもわざとらしい。メイクの部屋があちこちにあるが、もちろんバッグもドレスもエルメスの新作を飾っている。
友人の回想シーンで、「彼女が突然思い立って海に飛び込む」という話がある。ここはその海辺を再現し、撮った映像が流れていたが、「彼女」が裸の上に肉襦袢のような薄い下着を着ていたのには笑ってしまった。
「彼女」の隣人が語るパーティに参加する部屋もある。シャンパングラスが並んでいたので一杯飲めるかと期待したら、プラスチックのようなちゃちなグラスを持たされて、「乾杯」をして1、2分ほど周りの人と話すだけ。外国人の美少女モデル2人がみんなに加わる「ふり」をするが、すぐにおしまい。全体で45分ほど。
映画とは、現実=リアルを写すことが第一だ。裸にもならず、酒もついでくれないのは、映画ではない。私には「ファッション」という夢の存在のマイナス面が出ていたような気がした。それでも大半の女性客は満足していたようだったから、いいのかも。映画関係者が見るものではない。
それにしてもこの展覧会は案内のスタッフも含めて30人くらいが常時働いている。会場の借料も含めて莫大なお金をかけているようだ。新聞での一面広告もあったし。ファッションの世界は、やはりわからない。30日まで開催。
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