小倉紀蔵『朝鮮思想全史』を読む
またまた分厚い新書で小倉紀蔵著『朝鮮思想全史』を読んだ。例の学生企画の映画祭のための韓国学習の一環だが、この本は半年ほどまえに買ってあった。
フェイスブックで最初の職場の先輩が、小倉貞男・元読売新聞編集委員のご子息の本として紹介していた。小倉貞男氏は私もその職場で何度か会ったが、ベトナム通の情熱的なジャーナリストだった。その息子さんが韓国思想とはおもしろいと思って買った。
息子と言っても、私と同世代。そして何より中身が濃い。実は大学生の時は私は「哲学」や「思想」が大好きだったが、今では全く受け付けない。たぶん会社員時代に酒を飲み過ぎて、脳細胞が破壊されたのだと思う。とにかく抽象的な思考はもうできない。
だからこの本は難しい部分は飛ばす。それでも新発見は多かった。まず「朝鮮」という呼称だが、「現在の大韓民国では、「朝鮮」という固有名詞を嫌悪し、「韓国」という固有名詞を通時的に使用している」。そして朝鮮半島は「韓半島」と呼ぶ。これは知らなかった。
「日本文化が、外部から到来する文化に対してブリコラージュ(修繕)的な包摂法を取る傾向が強い、というのは松岡正剛氏の説だが、同じことは日本思想史においても語れるであろう。だが、朝鮮の場合はこれと異なり、外部から来た思想が、既存のシステムの全面的な改変を推進するという著しい傾向がある」
「高麗時代には仏教によって社会を徹底的に変革したし、次の朝鮮時代には朱子学によって社会は革命的に進化した。現在の朝鮮民主主義人民共和国も、共産主義という思想によって社会の全面的改変が行われていた。もちろん思想の多様性はそれぞれの時代に保たれていた」
小倉は朝鮮の思想のキーワードを「純粋性、ハイブリッド性、情報、生命、霊性」という。何だか矛盾する要素のようだが、小倉によれば特に「霊性」が重要で朝鮮でもその重要性を認識している学者は少ないという。
朝鮮半島には(日本もそうだが)、「単一民族」という思想があり、それは「檀君(タングン)神話」によって全員が檀君の子孫であると思っているからだという。古典に描かれている「檀君神話の叙述の基調は、その垂直性と男性中心性にある」
神は男が続くだけで、「女性は熊という動物の姿以上に登場しない」。これは3つの神が並んだり女神が活躍する『古事記』とは大きく異なるという。そのほか始祖伝説の多くに卵があったり、動物婚があったりするのも特徴らしい。
ここまでまだ50ページくらいで全体は450ページくらいあるが、今日はここまで。やはり「思想」は向いていないか。
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