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2018年7月 9日 (月)

『国家主義の誘惑』の怖さ

わかってはいるけれど、改めて正面から言われるとドキリとした。7月28日公開のドキュメンタリー『国家主義の誘惑』を見ての感想だ。これはフランスのテレビ局アルテ用に在仏の渡辺謙一氏が監督したもの。

フランスのテレビ用だから、憲法九条や天皇など、日本人にとって自明のことも全部見せる。すべては明治から遡って説明される。ナレーションはフランス語。もちろん監督は日本人だから、エキゾチズムや偏見は排除されている。

この監督は同じ枠で『天皇と軍隊』(09)を撮っていて、これは15年に日本で劇場公開された。今回はできたばかりの新作で、ある意味では『天皇と軍隊』の続編と言える。違うのは、中心となるのが天皇ではなく安倍首相であること。

自民党が2016年の参院選で大勝したあたりの映像を中心にそのなぞを探る。日本は明治以降、つまり19世紀後半からアジアの中で唯一欧米の帝国主義を取り入れた。「和魂洋才」で日本の伝統を残しながら「アジアの解放」と言いつつ、台湾、韓国、満州などを植民地化し、ドイツから南洋諸島まで手に入れる。

軍の指導者はアメリカに勝つとは思っていなかったのに、太平洋戦争に突入し、敗戦まで突っ走る。そして日本を支配したアメリカは天皇制を維持した。さらに日本に自衛隊=事実上の軍隊を認め、朝鮮戦争やベトナム戦争の基地として沖縄を使う。

日本はこれらの戦争のおかげで、自国が戦場にならずに経済的に潤った。高度成長が生まれ、経済大国になったが、今では周辺国と極めて不安定な状態にいる。そう言ったのは、フランスの日本専門家のピエール=フランソワ・スイリ教授やミカエル・リュッケン教授。

韓国や中国とは戦時中の事実をめぐって争い、領土問題が続く。ロシアとも領土問題が片付く気配はない。アメリカはあくまで日本を二流国とみなしている。北朝鮮とは拉致問題があっても、直接交渉できない。

この状況のなかで、安倍首相は憲法九条を改正し、日本が軍事力を持つべきだと主張する。それを支持する国民がいるのは選挙結果を見ればよくわかる。

そこで16年夏に突然出てきたのが、天皇の退位のお言葉。この映像は、この言葉を憲法九条改正に反対する唯一の反対勢力とみなす。日本の保守の象徴だったはずの天皇が、天皇を掲げる人々の夢想する軍備化を阻もうとするという逆説。

もちろんすべては現在進行形で、この映画にも結論はない。ただし、このような現実を歴史的に復習することは重要だと思った。本当ならば、高校生や大学生に見せて議論したらいいような内容の映画だ。


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