« 日本は野蛮国か | トップページ | 50円を拾った話 »

2018年7月11日 (水)

日本統治下の韓国映画:その(3)『軍用列車』

徐光霽(ソ・グァンジェ)監督『軍用列車』(38)は、2015年末にフィルムセンターで見ていたが、改めて見ると抜群におもしろかった。同じ1930年代後半でも『迷夢』(36)や『漁火』(38)と違って、くっきりと日本の影がある。

「影」というより、ほかの2本と違って日本人が出てくる。駅の区間区長は日本人で、中盤に2、3分日本語で機関士たちに演説をする。そして主人公に向かって「今の君の体は、日本国民全体の体だ」と励ます。

DVDの小冊子によれば、「『軍用列車』は朝鮮初の日本政府擁護の映画であり、「日本帝国主義が戦争で勝つため」に走る「朝鮮鉄道の重要な使命」を明らかにする」。

映画は最初に主な登場人物の俳優紹介が出てくる。プロパガンダ映画なのに、スター紹介があるとは。一番に出てくるのは、機関士・点用の妹・玲心役の文藝峰(ムン・イェボン)。この女優は、『迷夢』での自由を求める女性の悲惨な末路が強く印象に残った。

彼女はこの映画でも生活のために妓生をしながら、兄の友人の源鎮と結婚することを夢見ている。源鎮は彼女が金持ちに身請けされるのを阻むためにお金を作る必要が出てきて、軍用列車の情報をスパイに漏らす。

結局、源鎮は点用にすべてを告白して、スパイは逮捕されて事なきを得る。しかし、ラストで源鎮は点用の運転する軍用列車に飛び込んで自殺する。

つまり、妹の恋人は死んでしまうわけで、文藝峰は再び悲劇の女を演じている。彼女は例えば点用の恋人の食堂車に勤める女性(なぜか日本人の佐々木信子が演じる)の原節子のような大柄な天性の明るさと違って、最初から何とも暗い感じ。あえて言えば、溝口健二の映画の山田五十鈴のようだ。

この映画はポスプロに東宝が加わっている。録音は星栄一、音楽は伊藤昇、演奏はPCL管弦楽団、衣装調達は鐘紡京城サービスステーションというクレジットが出る。

最後に源鎮のポケットから出てくる遺書で、プロパガンダらしさが表に出る。「我皇軍の武運長久を祈りたいばかりにあえて此の道を選んだ。東洋平和に絶大な役割を持つ半島の鉄道をかたくかたく守ってくれ」

この映画は、前年に始まった支那事変=日華事変=日中戦争を受けての朝鮮鉄道の重要性を訴えたものに違いない。この映画以降、韓国映画に日本語が増えて、プロパガンダ色が強くなる。


|

« 日本は野蛮国か | トップページ | 50円を拾った話 »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/66888499

この記事へのトラックバック一覧です: 日本統治下の韓国映画:その(3)『軍用列車』:

« 日本は野蛮国か | トップページ | 50円を拾った話 »