『焼肉ドラゴン』の描く「在日」
朝鮮半島についてにわか勉強中ということもあり、『焼肉ドラゴン』を劇場に見に行った。これは鄭義信の作・演出による同名の演劇があり、話題になって賞ももらったが、今回それを脚本家自ら映画化したもの。
舞台は1969年から2年間の大阪。万博の頃の高度成長期の日本で、空港に近い朝鮮人集落に住んで焼肉屋を営む金さん一家を描く。
長女静花(真木よう子)は子供の頃の事故で足を引きずる。次女梨花(井上真央)は、哲男(大泉洋)と結婚したばかりだが、喧嘩ばかりしている。この2人は父親の連れ子で、母の連れ子の美花(桜庭ななみ)と夫婦の間にできた長男時生もいる。
そこに静花を好きになった韓国人・尹、梨花と仲良くなったもう1人の韓国人・呉、美花と結婚したい日本人の男・長谷川(大谷亮平)などが加わり、さらに焼肉屋の常連客も一緒になってドラマが展開する。
梨花と哲男の結婚届をめぐる騒ぎに始まって、学校でいじめられる時生の話、本当は静花が好きな哲男が尹がやってきた時に邪魔する話など、家の中はいつも怒鳴りあいの状態。結局、哲男は静花と尹の婚約をぶち壊す。美花が日本人と結婚すると言った時に、母親は絶対に許さないと騒ぐ。時生が自殺した時の一家の混乱。
もともとが演劇だからということもあるが、映画はほとんど狭い焼肉屋の中で進む。みんなが言いたいことを大声で言い、叫び、泣きわめく。カメラは彼らを長回しで追いかける。その中で「在日」の歴史が浮かび上がる。
父親が自分のこれまでを振り返る場面がいい。戦争に駆り出され、片腕を失った。戦後、ひたすら働いた父と母の人生に、現在がかぶさる。「帰国事業」で北朝鮮行きを決める静花と哲男。無理して日本の進学校に入ったばかりにいじめられる時生。
見終わると、自分の体がそのドヤ街の熱気を引きずっていることに気がつく。キムチや焼肉の匂いがしそうなくらい。たぶん演劇だったらこの感じはもっと強いだろう。
全体に演劇的過ぎるとはいえ、それがゆえに伝わる熱い思いがある。こういう別ジャンルから来る映画もいい。
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