『パンク侍、切られて候』をあえて見る
昔から石井聰互(今は石井岳龍)監督の映画と町田康の小説は苦手だ。そのシュールの方向が、どうも私の神経を逆なでする。町田康は昔はロックをやっていたが、もともと私はロックがわからない。そういえば、石井聰互もロック好きだった。
もう一つ言うと、この映画の脚本の宮藤官九郎も実は苦手だ。クドカンの監督作品はもとより、脚本作品もいつも演劇的かテレビ的でどこか違う。
原作・町田、脚本・クドカン、石井・監督の『パンク侍、切られて候』を見に行ったのは、「朝日」で山根貞男氏、「日経」で宇田川幸洋氏、「読売」で恩田泰子記者が絶賛していたから。主演が綾野剛で、國村隼、豊川悦司、染谷将太、東出昌大、浅野忠信、永瀬正敏、村上淳、渋川清彦と今の日本映画を支える男優が並んでいるのも気になった。
見た感想は、なかなかおもしろかったが、根本のところはやはり私にはピンとこなかった。一番よかったのは、俳優たちの化け具合。冒頭で綾野剛は無敵かと思ったら、意外に裏取引をしていて今風にセコイ。彼を始めとしてみんなが「ござる」という侍言葉に今の若者言葉を微妙に混ぜるのもいい。
綾野がいきなり通りががった相手を切ったのは「腹フリ党」の一員だからと言うが、この党を率いる浅野忠信のメイクがすさまじい。不気味な入れ墨に額に大きな傷。彼や染谷将太(お調子者風が抜群)が率いる何百人という男たちが裸の腹を突き出して踊るさまは、本当に怖くなる。
それを迎えるに、東出昌大のバカ殿(これがぴったり)と家老の豊川悦司が起用するのが、永瀬正敏の大猿(これが本当に猿の惑星のような仮面)率いる全国の猿軍団。共に数千のの腹フリ党員と猿たちが激突し、その結果大きな花火が何度も何度も上がる。
小説の地の文のようなナレーションが最初はうるさく感じるが、これが実は永瀬の猿の声だとわかった時に、慄然とする。ちなみに永瀬は最後まで猿の仮面をかぶっているので、声と目でしかわからない。
町田、クドカン、石井の3人の才能がうまくからみあった作品だと思うが、それでも彼らの「ロック魂」は私にはわからない。好きな人がいるのはわかるけど。
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