『カメラを止めるな』はおもしろいか
ようやく、上田慎一郎監督の『カメラを止めるな』を劇場で見た。実は7月初めに新宿の映画館に見に行ったが、平日昼間にもかかわらず、満席で入れなかった。8月からTOHOシネマズに拡大することになって、6回の無料券で見た。
実はその拡大に際して、ある新聞からコメントを求められたが、いかんせん見ていない映画については語れない。そんなこともあって、見に行った。
正直な感想は、「落胆」。そんなにおもしろいか、と思った。客層も内容も全く違うけれど、私は7月にエルメスが国立新美術館で開催した映画をめぐる展覧会「彼女と。」を思い出した。映画製作の現場を見せて、素人が「こうやって映画を撮るんだ」と知って喜ぶ内輪な満足感を満たす、といったらいいのか。
エルメスの場合はそこに「セレブ」感と「文学的」雰囲気が詰まっていた。『カメラを止めるな』は楽屋裏を見せて楽しませる、テレビ的なお茶の間感があった。「立ち位置」「仕切り」「目線」といったテレビ業界用語を日常的に使う若者が、素直に喜びそうなといったらいいのか。
映画は最初の30分超で、ゾンビ映画を作る現場をノーカットで見せる。その後に、その作品を作る経緯などが説明され、リハーサルが写される。そして実際の本番をさまざまな角度から見せる。
つまり、最初に見た出来の悪いゾンビ映画を撮る映画がいかにして作られたかを、観客はじっくりと知ることができる。そこにはネット配信側の思惑もあれば、ドタバタで走る回る現場のプロデューサーやスタッフもいる。監督役の家族の物語も挟みこまれる。
だからもし単館でひっそりと上映されていたならば、なかなか拾いものをしたような気分になっただろう。しかし突如としてアスミック・エースが付いてTOHOシネマズで拡大上映されて、満員の普段映画に行かないような若者に囲まれて見ると、「もっとおもしろい映画はたくさんあるよ」と言いたくなる。
例えば『ウインド・リバー』でも『悲しみに、こんにちは』でも『レディ・バード』でも、邦画なら『菊とギロチン』でも『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』でも何でもいいが、もっとおもしろいインディー映画はいくらでもあるのに、この程度の映画が大当たりしてしまうのが、何とも嫌な気分になる。
ひょっとすると、今後は小さな映画が予想外に当たった時に、アスミック・エースのような少し大きな会社が小銭稼ぎのために、途中から配給に加わってシネコンに持ち込むパターンも増えるかもしれない。これまたおもしろくない。
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