日本人はよく食べる
昔、展覧会の仕事をしている時に、フランス人とイギリス人に「日本人はよく食べる」と言われたことがあった。彼らは展示作業をしていても、毎日我々が昼も夜もきちんと食べるのに驚いていた。地方に一緒に行くと、朝食もしっかり食べる私を見て、目を丸くした。
確かにフランスだと、「今日は朝たくさん食べたから、昼は抜き」などと言うことがある。当時は、まだまだ伸び行く日本と停滞しているヨーロッパの差だろうと考えた記憶がある。
最近、新幹線に乗ったら、確かに弁当を食べている人が多いのに気がついた。朝9時頃の新幹線に乗って、いきなり大きな弁当を広げる人が何人もいる。確かに朝食べる時間がなかったのかもしれないが、朝からいつもそんなには食べないだろう。
先日、東京駅に夜8時頃に着く新幹線に乗った。大阪で5時半頃だが、乗ると多くの会社員がビールを飲み始め、つまみや弁当を広げた。実は静かに本を読もうとグリーン車に乗ったのだが。着いてから美味しいものを居酒屋や自宅で食べればいいのに、と思うのだが。
考えてみたら大学生の頃までは、「新幹線に乗って食べる」こと自体が嬉しかった。めったにない贅沢のような気がしたものだ。だけど会社員になって何十回も乗ったら、もうおもしろくもおかしくもない。それでも昔の習性で、新幹線に乗ったら派手に食べたいのか。
私は、食堂やレストラン以外で食べ物の匂いがするのが好きではないのかもしれない。このあいだ、平日の午後1時過ぎに『レディ・バード』を見に行ったら、映画が始まると横に座った中年女性が自家製の弁当箱を開けて食べ始めた。ぷんと醤油や沢庵の匂いがして、思わず席を変わった。
大学の教室で学生が食事をするのも、本当は好きではない。自分の研究室でも、まずものは食べない。ひょっとすると「食べる」ことは人間の根源的な欲望をあらわにするからかもしれない。食堂のようにみんなが食べている場所ならいいが、日常の場所では見たくない。
新幹線の中でまるで野獣のように食べる会社員たちを見ながら、そんなことを考えた。しかし私自身は、以前に比べたらあまり食べなくなった。
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