『「右翼」の戦後史』に考える
いつも「右翼」とは何だろうと思っていたので、最近出た安田浩一著『「右翼」の戦後史』を読んだ。この著者はヘイトスピーチをする人々を取材した『ネットと愛国』(2012)が抜群におもしろかったが、この本も今の「ネトウヨ」という存在を絶えず意識しながら過去に遡る。
アッと思ったのは、戦前の右翼団体が「アジア主義」を掲げていたこと。日本初の右翼団体と言われる玄洋社は福岡にできた政治結社だが、「皇室敬戴」「本国愛重」「人民権利固守」と共に「大アジア主義」を掲げていた。「玄洋社の海外部門を担当する黒龍会はアジア全域に人員を送り込み、中国では孫文らの辛亥革命を積極的に応援した」
さらに「玄洋社は明治の反政府運動である「自由民権運動」の流れの中で生まれた」「玄洋社の総帥を務めた頭山満は若くして自由民権運動に身を投じた」「頭山は自由民権の陣営内にいたフランス帰りでルソー研究者でもあった中江兆民とも親しかった」「民権獲得、アジア主義という点において、左右は自由民権運動の枠内で共存していたのである」
「一般的に日本右翼の源流は江戸時代末期の「水戸学」にあるとされる」「天皇を担ぎ出して幕藩体制の打倒を目指す「討幕運動」の原動力ともなった。/「尊王攘夷」思想は、そこから生まれた。スローガンである王政復古、外国排斥は、それぞれ天皇制護持、排外主義と言い換えれば、現在の右翼にも通じるものがあろう」
「欧米では有色人種や移民の排撃をうたうネオナチが右翼の象徴的な姿であるし、南米やアジアでは富裕階級の利益を守る軍事独裁政権が右翼とされた」。では日本の右翼はと言えば、戦後は「いとも簡単に「反米」から「親米」へと路線転換した」「民族主義、国粋主義の旗を振りながらも日米安保を肯定し、沖縄での米軍基地固定化に手を貸すのが、今の右翼の大部分と言えるからだ」
なぜそうなったのか。「右翼としての新しい門出を考えた時、エネルギーとすべきは「反共」だった。戦には敗れても、社会主義革命によって日本が日本でなくなることは避けねばならなかった。社会主義は(あるいはその発展形の共産主義)は、天皇を否定する」
そうすると、戦後の右翼ややくざ系右翼などは、実はアメリカからお金をもらっていたのではないか、と思ってしまう。この本ではこの問題には触れていないが、読売の正力松太郎や右翼の黒幕の児玉誉志夫がそうだったように、私には日本の戦後の右翼はCIAとつながっていたとしか思えない。
現在のネトウヨは、さらに韓国や中国嫌いが加わる。かつての「大アジア主義」はどこに行ったのか。ネトウヨにアメリカから金が出ているとは思わないが、彼らが沖縄基地反対運動を邪魔するはアメリカの利益にかなっているし、ひょっとすると、日本が中国や韓国と緊張関係を作る方が、米国にとって都合がいいかもしれない。
今回は知らないことが多くて引用ばかりになったが、やはり歴史を知ることは現在を考える上で重要だとあらためて思った。
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 『過疎ビジネス』に蝕まれる日本(2026.04.14)
- 椹木野衣『戦争と万博』の世界観(2026.04.02)
- 『アルジェリア戦争』を読む(2026.03.29)
- 高橋源一郎『ぼくたちはどう老いるか』にめまい(2026.03.19)
- 遠藤周作『留学』に考える(2026.02.01)


コメント