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2018年9月13日 (木)

最古参になってしまったベネチア映画祭:その(12)

数年前から日経新聞に映画祭の報告を書いているが、明らかに見る映画が変わった。新聞は受賞作を中心に書かざるをえない。そうすると、コンペの作品は全部見なければならない。今回はコンペだけで21本。

昔と違って1日に5、6本を見ることはできない。4本も相当きついので、普段は2、3本にする。そうすると、コンペ以外の作品をなかなか見られなくなる。

見たなかで面白かったのは、まず『アリー/スター誕生』。俳優ブラッドリー・クーパーの初監督でレディ・ガガと共に主演する作品だが、期待以上に楽しんだ。1937年の『スター誕生』の3度目のリメイクだが、ガガ演じるアリーが場末で歌うのを見て才能を感じ、彼女がスターになるよう応援する男(ブラッドリー・・クーパー)の話で、何より2人の歌を楽しめる。

コンペの似たタイプの映画に「ヴォックス・リュックス」があったが、こちらの方がずっといい。アカデミー賞レースに絡むことは間違い。

コンペ外の有名作家監督の映画もいくつか見た。ツァイ・ミンリャンの「顔」は、数人の中国人の顔を写した76分のドキュメンタリー。黙っている人もいれば、自分の過去を饒舌に語る人もいる。最後に常連俳優のリー・カンションも出てくる。別にどうということはないが、どこか気品と有難みのある映像だ。

フレデレック・ワイズマンの「モンロヴィア、インディアナ」は、題名通りインディアナ州の田舎町モンロヴィアの日常を見せる。たった2000人の町の理髪店、カフェ、スーパー、役所、バー、学校などを数分ずつスケッチのように写し出す。もうすぐ日本でも公開の『ジャクソンハイツ』に比べたら迫力も求心力も落ちるが、やはりワイズマン独特のカメラが自然に入り込んだ味わいが楽しめる。

チャン・イーモーの「陰」は、戦国時代の武将たちを描いたアクションもの。水墨画のようなエキゾチズムたっぷりの画面にCGを駆使したアクション映像が展開する。見てそれなりに楽しめるが、壮大な浪費という気もした。

アミール・ナデリの「マジック・ランタン」は、フィルム上映があと1日で終わる映画館の21歳の映写技師を描く。彼が上映している映画に、自分が出てきて若い娘と出会う。そこに出てくる年配の女性がジャックリーン・ビセットで、まだ十分美しいのに驚いた。映画愛を爽やかに見せる小品。

最後に見たのは、クラシック部門の『ベニスに死す』デジタル復元版。ベネチアでこの映画を再見する喜びは、筆舌に尽くしがたい。さて、このへんでベネチアの話はおしまい。

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