フランスをさまよう:その(2)
リヨンでは、前から行きたかったリヨン美術館に初めて行った。ここはフランスの裕福な大都市の美術館にふさわしく、ギリシャ・ローマやエジプト美術から現代までの作品が並んでいる。
日本では美術館と博物館は別物だが、英語のMuseum=ミュージアムやそれに類する仏語などではその区別はない。つまり、古今東西の人類の美的造形表現を見せるものがミュージアムであり、美術館と博物館を分けない。
リヨンほどの都市の美術館だとエジプトだけでも一部屋あって、棺や埋葬品が並ぶ。ここは1Fが彫刻と企画展、2Fが古代と工芸、3階がルネサンスから20世紀までの絵画。展示面積は7000㎡だから、日本だと東京都現代美術館全館くらいか。
いいのは、17世紀の修道院の建物を使っていて、真ん中に大きな中庭があること。大きな木々の間にブルーデルなどの彫刻があるが、あちこちにベンチがあって無料スペースなので市民の憩いの場所になっている。
絵画は、ヴェロネーゼ、ルーベンス、プッサン、ゴーギャン、モネ、ピカソ、ベーコンなど西洋美術史をたどる感じ。かつて「リヨン美術館展」というのが日本に来たと思うが、確かにここの一部をもってくるだけで十分に展覧会ができる。
リヨンは美食の街として知られるが、高級レストランに行くのが面倒になったので、bouchonブションと呼ばれる間口の小さい大衆店にいった。リヨン風サラダ、ソーセージ、クネル(魚のスリ身とスープ)、海老のグラタンなど、どれも重いが、赤ワインに合う。
最近はポール・ボキューズ市場という新しい施設が話題だというので、行ってみた。市場と言っても、鉄とガラスでできた現代的な建物で、肉や魚などの店が並び店によっては小さなレストランが併設されている。魚屋に行って、生ガキとオマール海老のソテーを食べたが、抜群に美味しかった。いわゆるリヨン料理ではないが、リヨンではこれが一番気に入った。
リヨンはフランスの地方都市では珍しく、これまで4回来たはず。1回目は92年の語学研修の時に、吉田喜重監督が演出したオペラ「蝶々夫人」を見た。2回目は94年に映画百年企画の交渉。3回目は95年の国際映画百年のシンポジウムで講演をした。
4回目は2000年頃に「リヨン・ビエンナーレ」を美術作家の神山明さんと見た。神山さんは2012年末に59歳で急逝した。彼と歩いたフルヴィエールの丘に再びケーブル・カーで登って、彼のことを考えた。
しかし、この街をこんなにゆっくり歩いたのは初めてで、その「都会」ぶりや暮らしの豊かさに驚いた。
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