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2018年9月 6日 (木)

最古参になってしまったベネチア映画祭:その(6)

もちろん現代を扱った映画がないわけではない。なぜか2本のフランス映画がそうだった。オリヴィエ・アサイヤスのDoubles vies (Non-Fiction)「二重生活(実話)」は、パリのインテリたちの不倫の話をユーモアたっぷりに描く。 

アラン(ギョーム・カネ)は出版社の社長で、出版のデジタル化に悩んでいる。作家のレオナール(ヴァンサン・マケーニュ)はこれまで通り最新作をアランに出してもらうつもりが、断られる。

レオナールの小説は自分のこれまでの不倫相手との経験を語ることで有名だが、アランの妻で女優のセレーナ(ジュリエット・ビノシュ)とレオナールは関係があった。さらにアランはデジタル担当の若い社員とできていた。

フランス映画にありがちな不倫の物語だが、ドキュメンタリータッチでどう話が進むかわからないし、あちこちにユーモアたっぷり。小太りでクマのようなヴァンサン・マケーニュがジュリエット・ビノシュと抱き合っているシーンが突然出てきた時は驚いたし、おかしかった。

プレス試写は沸きに沸いていたが、アサイヤスとして特にハイレベルではないのではと思った。ダヴィッド・エルオファン監督のFreres Ennemis「兄弟のような敵」は、パリ郊外の移民地区を描く。パリのインテリが繰り広げる喜劇「二重生活」とは全く逆のもう1つのフランスだ。

マニュエル(マティアス・スーナルツ)とドリス(レダ・ケタブ)はアラブの移民の集まる地区で生まれた親友だった。親族ぐるみで麻薬の取引や窃盗などを繰り返す生活が嫌で、ドリスはその地区を離れて警官になる。ドリスはその地区を担当することになり、マニュエルの逮捕を命じられる。

裏切りを繰り返すマニュエルの周りの人々が実にきちんと描かれているし、彼と時々会いながらも捜査を続けるドリスの苦悩がひしひしと伝わってくる。国際映画祭にはあまりないタイプの普通のよくできたノワール映画だったが、演出力は相当なもの。

イタリア出身のロベルト・ミネルヴィニ監督のドキュメンタリーWhat You Gonna Do When the World's on Fire?「世界に火がついているのにどうする?」は、2017年の警察官による黒人殺しに端を発した、アメリカ南部の黒人たちの動きを白黒で描く。

仲間や家族と議論するさまや警察の前で訴えるさまを、カメラは密着して見せる。会話自体がラップのように音楽的で盛り上がる。まるで普通の劇映画の俳優のように話す女性もいる。説明も何もないのは、フレデリック・ワイズマンのようだが、こちらは出てくる人々がカメラを意識して演技しているようなところが違う。

根底にあるのは白人以外を差別する西洋社会で、「兄弟のような敵」ともつながってくる。

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