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2018年9月 7日 (金)

最古参になってしまったベネチア映画祭:その(7)

歴史ものはほかにもあった。The Sisters Brothers「シスターズ兄弟」は、フランスのジャック・オーディヤールが英語で撮ったリアルな西部劇だった。チャーリー(ホアキン・フェニックス)とエリ(ジョン・C・ライリー)は人殺しを仕事とする流れ者。

ある男を殺す仕事を引き受けてオレゴンからカリフォルニアへ向かうが、兄弟は殺すはずの男ウォーム(リズ・アーめっど)と彼が組むモリス(ジェイク・ギレンホール)と仲良くなってしまう。

いわゆる西部劇だが、実はまじめな兄エリと酒飲みの弟チャーリーが次第に仲が悪くなったり、彼らがウォームとモリスと出会って手を組んだりと、予想外の展開が実にリアル。ウォームの化学の知識を生かして、協力して川底から金を取るシーンも痛快だが、これが思わぬ悲劇を生む。

アメリカの一流監督と比べても全く遜色のない迫力満点の演出力で、かつ展開は繊細でドキュメンタリーのようにぐいぐい迫ってくる。この監督はこのままハリウッドでも活躍できるのではないか。西部劇に新しい風を吹き込んだような傑作だった。

第一回長編の『サウルの息子』が話題になったネメシュ・ラースロー監督の新作Sunset「サンセット」も歴史もので、1913年のブダペストが舞台。ブダペストの高級帽子店に、イリス・レイターと名乗る娘が訪れることから話は始まる。実は彼女はこの店の創立者の娘だった。

両親の死後、2歳でトリエステに送られたイリスは、両親が作った店が今はビルという男に支配されていることを知る。両親について知ろうとするが、会う人はみな話そうとしない。ふとしたことから兄がいたことがわかり、兄を探し始める。そこから見えてくるのは、その店の病んだ構造だった。

イリスが必死でブダペストの町の中を探す様子を、幻想も交えながら手持ちカメラで描くのは『サウルの息子』と同じ。だが、こちらはすべてが謎のようで、会う人もほとんど何者かわからない。だから142分は本当に長かった。この映画もマイク・リーの新作(これは154分)と同じくカンヌに落ちたという噂だが、それもわかる気がする。

今年はネット・フリックス3本とアカデミー賞狙いとカンヌ落選組で、今年のベネチアはずいぶんハイレベルになった。カンヌよりいいという評論家も多い。

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