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2018年9月 9日 (日)

映画以外のベネチアの話:その(1)

もう賞が発表されたが、それについてのコメントは後日にして、今日はベネチア映画祭がなぜいいかについて書きたい。それはまず、おいしいものが食べられるから。カンヌで食べるフランス料理と比べても、ベネチアは抜群にいい。以下、毎年食べるものを書いてみる。

まず、一番エレガントな「ヴァレンチノ」だと前菜は「ホタテの三種」。うち1つはほうれん草を入れたパイ包みになっていて、もう1つはハーブ入りのオリーブ漬け。もう1つは忘れたが、味も触感も全部違う。パスタは「カラスミのスパゲッティ」で、カラスミのほのかな香りが和食のよう。それから自家製ニョッキのカニソースは優しいまろやかな味。

「ヴァレンティノ」はリド島では珍しい布テーブルのあるエレガントなリストランテで、値段もそれなりに張るが、味は繊細で盛り付けも美しい。問題は全体がスローなことで、予約していても座るのに10分かかったり、料理の出てくるのが遅かったり。

10年ほど前にできた「オステリア・アル・メルカ」は、隣の魚屋が始めた店。イカ墨のスパゲッティは絶品で、魚介のフライはリド島で一番おいしい。とにかく全体に量が多いので、魚介のフライなどは2人に一皿でも多い。かつて小さな市場があったような六角屋根の店で紙テーブルだが、最近は「味だけならヴァレンチノを上回る」という意見も聞く。そして店員に温かみがある。

「ヴァレンチノ」は川向いにあった「アリティギエーレ」が10年ほど前に移転して改名したので、「トラットリア・アンドリ」は一番の老舗になる。家族経営のこの店は、食器やテーブルも自分たちで作っている。ここは「アンドリのスパゲティ」という名の魚介のスパゲティが絶品。時間はかかるが、リゾットもうまい。前菜や魚料理は普通だが。

去年発見したのが、「ダ・クリクリ・エ・テンディーナ」。これまでの店が船着き場と映画祭会場の間にあるが、ここは会場から港と反対方向に歩いて約10分。イタリア文学者の友人と食事をした時に現れた、リド島住まいの彼の同級生の日本人女性が連れて行ってくれた。

船着き場から映画祭までは高級アパートが並ぶが、こちらは庶民的な地区。客も地元の人ばかりで、いい感じ。パスタはポモドーロ(トマト味)と魚介と2種類しかないが、本当にシンプルな味でいい。

もう一軒「ラ・ファヴォリータ」が港から会場と反対側に30分ほど歩いたところにある。ここは遠いのとリド島で唯一のミシュラン掲載店で数日前の予約が必要になるので、最近は行っていない。昔は蓮實重彦夫妻と行ったのを思い出した。

ここに書いた4軒を順繰りに回っていて、毎年最低2回ずつは行く。飲むのはプロセッコ(ベネチアのスパークリングワイン)と地元の白ワインでべろべろになる。夜の7時半の試写終了後、10時前から始めて12時頃に終わる。そして翌朝遅くとも6時には起きて、8時半の試写に行く。私にとっては、10日間、映画と飲み食いのことしか考えない、年に一度の道楽だ。

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