« 最古参になってしまったベネチア映画祭:その(9) | トップページ | 最古参になってしまったベネチア映画祭:その(11) »

2018年9月11日 (火)

最古参になってしまったベネチア映画祭:その(10)

コンペであまり好きでなかった若手の3本についても触れておきたい。オーストラリアのジェニファー・ケント監督の長編第2作The Nightingale「ナイチンゲール」は、19世紀前半のオーストラリアを舞台に一人の女性を中心に描く。

アイルランド出身のクレアは、英国の将校に犯され、夫と子供を殺される。彼女はアボリジニのビリーを案内人にその将校に復讐すべく追いかける。

冒頭から残酷なシーンがてんこ盛りで繊細さには欠けるが、女性の執念を描く力量は感じられるし、ある種のユーモアもある。いわばオーストラリアの黒歴史を語る映画だが、描かれる人種差別や女性差別は現代の問題でもある。この映画は審査員特別賞を取ったが、ある種の強引な演出力が認められたのではないか。

アルゼンチンのゴンザロ・トバル監督の長編2作目Acusada「被告」は、女子高生のドロレスが友人殺害の疑いで裁判にかけられる話を描く。この事件はメディアの注目を浴び、彼女とその家族の生活は一変する。メディアの功罪を描いた作品だが、一本調子で飽きてしまう。裁判を描いた「7月22日」に比べたらその差は歴然だ。

ブラディ・コーベット監督のこれまた長編第2作Vox Luxヴォックス・ルックスは、セレステが高校生から次第に有名な歌手になるまでの20年ほどを描く。通う高校がテロに襲われ、その葬儀で歌を歌ったことで注目されたセレステは歌手を目指す。

出だしの高校生の部分は興味が持てたが、後半の30代になってからをナタリー・ポートマンが演じる部分はよくなかった。そのうえ、高校時代を演じた俳優が娘として出てくるのもよくわからない。

もはや新人とは言い難いラースロー・ネメシュ監督を含めて若手監督の長編2本目が4本もあったが、今年のコンペは脂の乗り切ったベテランが自由に作った作品が並んでいたので、どうしても見劣りしてしまう。しかし国際映画祭には、このように若手を少しずつ入れてゆくことが重要なのだろう。

若手と言えば、VR(仮想現実)映像セクションのコンペは2年目を迎えた。数作品を見たが、うち2つは体験型。ゴーグルのみならず、背中にリュックのようなものを背負い、足にも線をつなぐ。自分が画面の中に入って楽しむタイプで、宇宙探検をテーマにした作品では、なかなか目的の場所に行けなくて、気分が悪くなった。この分野はまだまだ発展するだろう。

なお、今日の「日経」の夕刊に私のベネチア映画祭報告が載るはずなので、ご一読を。

|

« 最古参になってしまったベネチア映画祭:その(9) | トップページ | 最古参になってしまったベネチア映画祭:その(11) »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 最古参になってしまったベネチア映画祭:その(10):

« 最古参になってしまったベネチア映画祭:その(9) | トップページ | 最古参になってしまったベネチア映画祭:その(11) »