最古参になってしまったベネチア映画祭:その(5)
ほかにも長尺の歴史ものは多い。オープニング作品のデイミアン・チャゼル監督First Man「最初の人」は、アポロ計画で1969年に月に行ったアームストロング船長の話で、1961年から描かれる。
アームストロングを演じるのはライアン・ゴズリングで、厳しい訓練の日々をこれでもかと見せられる。そして挟み込まれるのが、子供を育てながら家で待つ妻のつらい姿。
ジェミニ計画からアポロ計画へどのような変遷があったかや、技術的にどのようにして月に行けたのかはあまり出てこない。ひたすら辛さに耐える飛行士とその妻の姿が、見ていて身体的に痛いくらいに迫ってくる。この監督は技術と物量で推し進めるタイプだが、この映画も同じ手法だろう。135分。
『ロブスター』など奇妙な非常理劇で驚かせてきたギリシャのヨルゴス・ランティモス監督The Favourite「お気に入り」も歴史もので120分。今回の舞台は18世紀の英国で、病気がちなアンヌ女王を取り巻く2人の女の話。
オリヴィア・コールマン演じるアン女王は体が弱く、常に側近のサラ(レイチェル・ワイズ)に頼っている。2人には性的な関係さえありそうだ。ところが新しいメイドのアビガイル(エマ・ストーン)は、だんだん女王の信頼を勝ち得て、サラの地位を奪い始める。
映画は2人の女性の嫉妬に満ちた戦いを皮肉たっぷりに見せる。どんどん醜さを見せる女王もすさまじい。儀式の数々を始めとして、広大な王宮を長回しの広角レンズでけれんみたっぷりに写す。同じような場面や演出が多いので少し退屈するが、それでも個人的にはこの監督のこれまでの作品よりはずっといい。
リック・アルヴァーソン監督のThe Mountain「山」は、1950年代のアメリカを描いたもので、108分(短い!)。ロボトミー手術を手がける医師は、父を亡くしたばかりのアンディ(タイ・シェリダン)をカメラマンとして雇う。アンディは患者を撮影しているうちに、ある女性患者と仲良くなる。
後半はその女性の父(ドニ・ラヴァン)が現れて、とんでもない展開になる。全体にタガがはずれた作品だが、それが抑えた色調で淡々と語られる。なぜこんな話を映画にするのかと思いながら見た。これは私には、映画祭前半では最低だった。
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