日本統治下の韓国映画:番外編『望楼の決死隊』
久しぶりに韓国ものを書く。今井正監督の『望楼の決死隊』(1943)のDVDを見た。これはデアゴスティーニ社の隔週刊の特集「東宝・新東宝戦争映画DVDコレクション」の1本として、2015年に初めてDVD化されたもの。この映画を見たかったのは、これが日本人監督によって朝鮮半島で撮影されたプロパガンダ映画だから。
この映画に韓国の監督、崔寅奎(チェ・インギュ)が「演出補佐」として加わっている。崔はここにも書いた『授業料』(40)ですばらしい演出を見せている。そして「製作応援」として朝鮮映画製作株式会社もクレジットされている。
映画は満州と接する朝鮮北端の国境警察官たちの駐在所を描く。この地には満州国討伐軍に追われた共産匪賊(すごい言葉!)の群れが時おり襲ってきていた。
警官には韓国人もおり、金巡査は黄龍が営む支那料理屋で匪賊・蛟龍の部下に銃で撃たれる。黄龍の息子が帰ってきて匪賊の襲撃が近いことを告げる。息子のその一味のようだ。
終盤は匪賊が一斉に攻めてきて、日本人も韓国人も何人もの被害者を出す。とうとう駐在所の中まで攻めてきたところで、日本の援軍が到着する。
前半は金巡査の死くらいしか大きなできごとはないし、ラストの銃撃戦はそれなりに迫力はあるが、西部劇に似たお定まり感がある。この映画の見どころは、警察官の日常にある。まず、酒を飲むと最初は日本の歌が歌われるが、だんだん朝鮮民謡が始まり、みんなで歌い踊る。
駐在所の中心となるのは高田稔演じる高津首席だが、彼は韓国人を一切差別しない。その妻役が原節子で、彼女は正月には巡査全員におせちや雑煮をふるまう。そのうえ看護師の知識があり、妊娠した現地人の出産を手伝うなど、まさに「内助の功」を体現する。そして敵が攻めて来ると自らも銃を取って撃つ。背が高く肩幅の広い彼女はまさに「国母」のようにみんなを守る感じ。
1930年代の韓国映画には日本語は出てこなかったが、40年代の韓国映画には半分ほど出てくる。そして1943年に全編日本語のこの映画が日本の監督によって作られる。それでもプロパガンダ色はなく、「共産匪賊」という「仮想敵」は憎みながらも、現地民とは仲良く生きてゆく日本兵を描く。
現実はこんなに甘くなかっただろう。しかし韓国人に溶け込もうとする日本人がいたことも事実だろう。それにしても戦後は「永遠の乙女」となった原節子の軍国女性ぶりはすさまじい。
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