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2018年9月23日 (日)

『ここは退屈 迎えに来て』の軽さと重さ

廣木隆一監督は最近は年に2、3本ずつ撮っているので、とても全部は見きれない。しかし『軽蔑』(13)や『さよなら歌舞伎町』(15)や『彼女の人生は間違いじゃない』(17)などのインディペンデント作品は、どれも見ごたえがあった。

10月19日公開の『ここは退屈 迎えに来て』の試写を見に行ったのは、予告編を見て気になったから。橋本愛の憂いを帯びた表情に惹かれた。

映画を見て、その軽さに驚いた。富山が舞台と聞いていたから、登場人物は『彼女の人生は間違いじゃない』の主人公の女性のように何か重いものを抱えているかと思いきや、そんなものはない。

橋本愛演じる「私」は、東京で10年働いた後に富山の実家に帰り、ライターとしてタウン誌などの仕事をしている。彼女と組むカメラマンの須賀(村上淳)は似たような経歴で、彼女とよく組む。どちらも飄々として明るい。この2人が恋に落ちる話かと思ったら、全く違った。

「私」は、高校の同級生のサツキと高校時代に憧れだった椎名くん(成田凌)に会いに行く。須賀はおもしろがって、車を運転してついてゆく。それだけの話だが、そこにさまざまな人々の過去の映像が入る。現代は2013年の設定だが、2008年、2010年、2004年とめまぐるしく移り変わり、行きつ戻りつする。

登場人物もこの4人だけでなく、何人も出てくる。「椎名くん」と付き合っていたが、別れてしまった「あたし」(門脇麦)とその彼女につきまとう男。最終的に「椎名くん」と結婚する南とその親友あかね。あかねの結婚相手の男(マキタスポーツ)と彼が昔つきあっていた「私」の同級生なっちゃん。「椎名くん」の妹と家庭教師の女性。「椎名くん」に憧れていた同級生の「新保くん」。

10人くらいが変わりばんこに出てきて、話は1本にまとまらない。どこかで誰かがつながってはいるが。そのうえ、それぞれのこだわりも強くない。恋愛にしても、仕事にしても。「何者かになりたい」希望を持っていた「私」さえも、それがかなえられたかどうかもわからない。そんな軽い場面が、点描スケッチのように続いてゆく。

それでも終盤になってようやくそれぞれの関係が明らかになってゆくと、橋本愛や門脇麦の表情の奥にある哀しみが浮き上がってくる。人生の取り返しのつかなさを知った時の重い気持ちが沁みてくる。この監督としては小品かもしれないが、やはり魅力的だ。

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