『若おかみは小学生!』の精神性
フェイスブックで複数の友人がアニメ『若おかみは小学生!』をほめていたので気になってはいた。見に行こうと思ったら、気づいた時には朝早くしかやっていないので諦めていたが、急に拡大再上映が始まったので行ってみた。
私は全く知らなかったが、2003年から10年ほど続いている同名の児童文学シリーズが300部も売り上げているらしい。それが漫画になり、テレビアニメにもなっている。
そんなことも知らない私だが、劇場で見て、その精神性にちょっと驚いた。映画は小学生の「おっこ」こと関織子が両親と田舎で能舞台を見ているところから始まる。帰り道、交通事故があっておっこは一人になり、スーツケースを持って祖母の住む田舎に戻る。
そして小学校に通いながら、旅館「春の屋」を営む祖母の元で「若おかみ」として活躍するという話。まず驚くのが、交通事故で亡くなった父母への思いがすぐには現れず、小学校の友達や旅館のお客との会話などを通じてじんわりと出てくること。
それ以上にびっくりしたのは、おっこにだけ見える幽霊がいくつも出てきたこと。祖母の幼馴染のウリ坊、小学校の友人の姉、古い鈴に住み着いていた小鬼など、原作の小説や漫画を知っている人には自明だろうが、田舎の旅館に幽霊がいっぱいという設定に不思議な土着的精神性がある。
そしてその宿に来る客が変人ばかり。妻を亡くした小説家とひねくれた息子、美女の占い師、そして最近まで入院していた男の家族。最後の家族がおっこの父母の死と関わっていたが、おっこはそれを乗り超えてゆく。これまた精神的な物語だ。
おっこを始めとする人物の造形はいかにもアニメ顔だが、旅館の部屋の中や坂のある温泉町の様子などは細密画のように丁寧に描かれていて美しい。最後の花吹雪には感動してしまった。監督は高坂希太郎で、多くの宮崎駿作品の作画監督と聞いて納得した。
宮崎駿とはかなり違う世界観のアニメだと思ったが、どうだろうか。一見の価値あり。
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