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2018年10月 2日 (火)

最近の読書から:『歴史修正主義とサブカルチャー』

最近、『新潮45』という雑誌が休刊になったが、伝統ある出版社が急にネトウヨじみた原稿を載せた理由は、「部数を回復するため」だった。いつの頃からか、「朝日」に代表されるリベラル派的発言を叩いたり、韓国や中国を批判すると本や雑誌が売れるという図式ができあがった。

その情けない現象を、社会学的及び歴史的に分析したのが、今年の始めに出た倉橋浩平著『歴史修正主義とサブカルチャー』。「本書は「歴史修正主義」を対象として「新しい歴史教科書をつくる会」などの活動が活発になる一九九〇年代以降の四半世紀に起こった政治とメディア文化を分析することを目的としている」

ひらたく言えば、1990年代に起きた「南京虐殺はなかった」とか「従軍慰安婦は「朝日」の捏造だ」というような歴史を捻じ曲げる動き歴史修正主義が、どのようなメディアでどのような筆者によってなされたかを分析している。いかに保守論壇ができ、マンガがどのような役割を果たし、メディア間対立がどのように作られたかなどがえんえんと書かれているが、正直なところ読み出して気が滅入った。

そこで、結論にあたる終章の部分をまとめたい。「第一に歴史修正主義を担っている知識人、政治家あるいは運動家は、そのほとんどが「歴史」に関する専門家ではなく、また実証的根拠が薄弱な文献の引用からその言説を作り出していた」

「第二に、歴史修正主義の新しいアマチュアリズムの知のありかたが普及してゆく際に、商業メディア文化が媒体となっていた」「ディベート自己啓発書のような商業蛦出版物は、政治言説の共有知として論破マニュアルに転化していき、大塚英志が喝破したような論壇誌の「サブカルチャー化」は、まさに政治言説の「アマチュア化」「商品化」「参加分化型」を物語っていた」

「第三に、メディア市場の競争によって、メディア産業間の対立そのものが先鋭化してくる」「雑誌ジャーナリズムでは、ほかのメディア、特に「朝日新聞」と敵対することで反対者(反左翼・反リベラル)の票を集め、売り上げを意識した企画を構成する」

そしてネット時代になると、「ネトウヨ」が現れて「歴史修正主義者を調子づかせる」。そして「情報に対する「査読」「編集」(=オーソライズ)の消失、あるいはそれらの機能の著しい低下という変化がある」。この行き着くところが、『新潮45』だろう。

「歴史修正主義の主張に、どのような「真実」もない。歴史修正主義は、「真実」とはどのようなものか、メディア特性を用いて私たちに問うている。より正確に言えば、私たちの「真実」と「嘘」を見分ける理性をこそ攻撃しようとしている。メディアで同じ主張が繰り返されれば「真実」なのか、一定数の賛同者(読者)がいれば「真実」なのか。相対的ならば「真実」なのか。売れれば「真実」なのか」

個人的にはこの問題は、新聞、出版、テレビなどの既存のメディアの抵抗にかかっていると思っている。そのうち半分以上が抵抗をやめているから、こんな事態が起きているのではないか。

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