フランスをさまよう:その(4)
もう帰国してだいぶたったが、あと1回だけ書いておきたい。先日書いたように14区の「ジャコメッティ研究所」から7区の「ボーパッサージュ」まで歩き、そこで昼食を取ったが、それからさらに15分歩いてセーヌ川を渡り、ルーヴル美術館に行った。なぜかと言うと、そこで「名和晃平展」が開かれていると知ったから。
名和晃平は、だいぶ前に東京都現代美術館で大きな個展を見て、驚愕した記憶がある。その無機質でありながら未来的な造形の数々は、日本の現代美術のレベルを遥かに超えていた。
今年は「ジャポニズム2018」ということで、フランスで日本関係の企画が多い。「名和晃平展」もその1つだが、ルーヴルでやるからには、かつてヴェルサイユ宮殿でオラファー・エリアソンがやったような興味深い企画になるだろうと期待していた。
ルーヴルやオルセーなどの大美術館は、最近は予約して行く。その日でも日時指定券を買っておけば、並ばずに入れる。さてピラミッドから入場して、すぐに受付に聞いた。「名和晃平展はどこですか?」。すると受付のアフリカ系の女性は面食らったようだが、丁寧にタブレットを見て「あれです」と指さした。
その先には、ピラミッドの部分にぶら下げられた金色のインスタレーションがあった。「それだけ?」「はい」。しかしそれは入らなくても見られた。がっかりした私は、久しぶりに絵画をじっくり見ようと考えを変えた。
まずはドゥノン翼1階のグランド・ギャラリー。もちろんモナ・リザもあるが、これは観光客が多すぎて近づけない。レオナルド(・ダ・ヴィンチ)だと《岩窟の聖母》や《聖アンナと聖母子》などは混んでいない。ボッティチェリ、ラファエロ、カラヴァッジョ、アルチンボルドなどイタリアのルネサンスからその後にかけての絵画が実によく揃っている。そういえば、最近見た映画『顔たち、ところどころ』では、アニエス・ヴァルダがこの辺りを車椅子で駆け抜ける。「アルチンボルド!」と叫んでいた。
その反対にスペイン絵画やイギリス絵画は少ない。ゴヤやムリッリョが数点のみで、エル・グレコは1点しかなかった。それから2階に昇ってシュリー翼のフランス絵画。ラ・トゥール、ブーシェ、フラゴナール、ヴァト―、アングル、コローなど17世紀から19世紀半ばまでを、うんざりするほどたっぷり見た。
それからリシュリュー翼のネーデルランド絵画も充実している。レンブラント、ヴァン・ダイクなどを経てフェルメールの有名な2点にたどり着く。この辺りは客はほとんどいない。日本人は皆無だが、中国人や韓国人の真面目そうな人々が時々いる。もはや日本人は、ルーヴルにも行かないのか。
これだけ見ると、早足の私でも2時間半かかった。くたくたになって地下鉄に乗った。それでも、次回は久しぶりに彫刻や古代文明などをじっくり見たいと思う。
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