『華氏119』に考える
トランプ大統領が、米中間選挙で下院を民主党に取られた。そもそもアメリカの選挙制度はさっぱりわからないが、マイケル・ムーアが選挙に合わせて緊急公開したという本作を見てみたいと思った。この監督は『ボウリング・フォー・コロンバイン』(02)の頃は本当におもしろかった。
全米ライフル協会の会長だったチャールストン・ヘストンの豪邸にアポなしで行き、ヘストンが困って途中で部屋から逃げるシーンなど本当におかしかった。
しかし最近の作品は、反共和党のプロパガンダ映画でしかなく、「アポなし取材」もムーア自身が有名になったせいもあって、いまひとつ。今回の映画も、反トランプのプロパガンダ映画であることは変わりない。トランプは演説で堂々と人種差別発言をし、会場から黒人を追い払う。セクハラ発言は日常的で、娘のイヴァンカへの異常な愛情も気持ち悪い。
この映画がこれまでと違うのは、ヒラリー・クリントンやバラク・オバマなどの民主党のトップをも非難していること。あるいは『ニューヨーク・タイムス』や『ワシントン・ポスト』などのリベラルな新聞もおかしことを指摘していること。
ヒラリーは民主党内の大統領候補を選ぶ選挙で、結果に手を加えてサンダース候補に勝った。オバマは大統領時代に水道水に鉛が混入している問題が起きたミシガン州フリント市を訪れ、市民の期待をよそにこの問題の原因を作ったスナイダー知事と手を結ぶ。
こうした大筋以外に、いくつかのエピソードが混じっている。フリント市の汚水問題に戦う市民、給料のあまりの安さに立ち上がるウェスト・ヴァージニア州の先生たち、ガン所有に抗議する高校生たち。
終盤、ナチスの映像や証言が加わる。いかにもトランプはそこまで行くと言いたげに。そして映画は高校生の一人、エマ・ゴンザレスの演説で終わる。これは私もネットで見たことがあった。
基本的にはトランプを非難するが、民主党やリベラル・メディアも叩く。希望は一般市民と言いたげだ。しかし、今、民主党やリベラルの間違いを見せることは、トランプを利することになりやしないか。一般市民の抗議でもでは、トランプは終らないだろうに。個人的にはそんなことを考えた。
題名の「119」はトランプが大統領になった日、11月9日を指す。どのメディアも予想しなかったし、ヒラリーの方が投票率は高かった。そこで気になったのは、投票しなかった人の割合が2人に投票したそれぞれの割合よりも高かったこと。投票に行かない無関心層が、日本も含めてマジョリティになり、結果としてとんでもない政治家を生んでいる。
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