『おかえり、ブルゴーニュへ』の心地よさ
東京国際映画祭や東京フィルメックスで、アジアや「辺境の地」のきつい状況の映画ばかり見ていると、急にフランス映画やイタリア映画を見たくなる。何よりもその言葉を聞きたくなる。若い頃必死で学んだ言葉だから、聞くだけで体が反応する。
そんな「隠れおフランス」な私にぴったりだったのが、セドリック・クラピッシュ監督の『おかえり、ブルゴーニュへ』。劇場で見たが、客層はまさにワインでも飲みそうな感じの中高年ばかりだった。確かに「ブルゴーニュ」と聞いて、ピンと来なければこの映画は見に行かないだろう。
映画は、ブルゴーニュの葡萄畑を舞台に、3人の兄妹を描く。長男ジャンは家を捨てて10年間世界を放浪していた。母が亡くなった時も帰らなかったが、父が危篤と聞いて帰ってくる。実家は妹のジュリエットが継ぎ、弟のジェレミーは近くのワイン醸造家の娘と結婚してその家の敷地に住んでいた。
父が亡くなり、3人は相続税を払うために、畑の一部を売るか、家を売るかの選択に迫られる。その間にもワインの刈り入れの仕事があり、破砕や発酵へと続いてゆく。
映画の冒頭から葡萄畑の四季が写される。そしてワインを作る仕事は、天気や気温を見ながらの勘がすべて。兄と妹では意見が合わない。兄は一方でオーストラリアに妻子を残しており、そこでのワイン作りも気にかけている。
親の死と財産の相続に伴う兄弟の確執は、今やどこにでもある普遍的な人間のテーマ。それに手作業のワイン作りと四季の変化が加わって、見ていて何とも快い。ムルソーやアリゴテなどの有名なワインの名前もふんだんに出てきてワイン好きには楽しい。
ただし、かつてのこの監督の『猫が行方不明』などに比べると、楽しさは半減しているし、ドラマ性も弱い。監督は実は私と同じ年の生まれだが、たぶん現実の時の流れの過酷さを淡々と描きたかったのだと思う。だから終わりもあっけないが、それでいいのかも。
| 固定リンク
「映画」カテゴリの記事
- 『ディスクロージャー・デイ』のおもしろさと不可解さ(2026.10.07)
- 『ナギダイアリー』の新境地(2026.10.01)
- 『ビルマの竪琴』から『花と兵隊』へ(2026.09.27)
- 1年ぶりの海外で考えたこと:その(5)飛行機の映画(2026.10.03)


コメント