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2018年11月 6日 (火)

ボナールの快楽

映画祭が終わってからだが、六本木の国立新美術館で12月17日まで開催の「ピエール・ボナール展」を見た。ボナール展はこれまで何度か開かれているが、今回の展覧会はたぶんこれまでで最大でかつ質が高い。

全部で130点を超す作品が大きな新美の展示室にゆったりと並んでいる。「オルセー美術館特別企画」と銘打たれているだけに、8割はオルセー美術館の所蔵品で、この美術館が得意とする写真も3点近く含む。

実は一番驚いたのは、軍服姿のジャン・ルノワール監督と父親で画家のピエール=オーギュスト・ルノワールが一緒に写る珍しい写真があったことで、ボナールが撮った写真だとは知らなかった。これは1996年秋に、現国立映画アーカイブでジャン・ルノワールの全作品上映を企画した時のカタログに使ったものだ。

当時は新聞社もお金があったので、カリフォルニアの山中にアラン・ルノワール(ジャンの息子)の家にインタビューに行き、カタログのための写真を求めてUCLAの図書館に通った。その図書館には、アラン・ルノワールが所蔵していた父親関連の写真をすべて寄贈していた。

同行してくれた斉藤綾子さんと丸二日間その図書館で白手袋をして写真を選んだが、ボナール展で見たのがその一枚。この写真は複製を購入したので、今では国立映画アーカイブの所蔵のはず。

そのほかの写真も興味深い。特に木影に立つ全裸のマルトの写真数点がどこか痛々しい。時々なぜか画面の奥にボナール自身がほんの少し映り込んでいる。カタログの解説によれば、ボナールも裸になっていたらしい。

ボナールが撮られた5、6分の動画もあった。マーグ財団の所蔵だが、ボートを漕いでいたり、泳いでいたり、庭を散歩したりしているものだが、彼は1880年代だから1920年頃までの映画の草創期に、写真や映画という新しいメディアにかなり関心があったのではないか。

発明されたばかりの映画というメディアを考えると、ボナールの絵画にもう1つの光が当たる。多くの作品があえて逆光で撮られたように、影に満ちている。人物と背景が等価に混じり合う。そして四方八方に乱れ散る光の氾濫を画面に生かそうとする。みんな初期の映画が試みた方向のようにも見えてきた。

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