ブルーノ・デュモンのジャンヌ・ダルクを見る
「カイエ・デュ・シネマが選ぶ フランス映画の現在」に行ってみた。場所はアンスティチュ・フランセではなく、ユーロスペース。見たのはブリュノ・デュモン監督の『ジャネット、ジャンヌ・ファルクの幼年期』(2017)。この監督はかつては『ジーザスの日々』などが日本で公開されていたが、最近は来なくなった。
2016年のカンヌで見たMa Loute「マルット」は、20世紀初頭の田舎の港町を舞台にした、笑うに笑えない不思議なコメディだった。フランス人の友人から、その前の『プティ・カンカン』とその後の『ジャネット』がずっといいと聞いていたので『ジャネット』を見に行った。
これまた、実に変な映画だった。8歳頃と15歳頃のジャンヌ・ダルクを描いたものだが、なんとミュージカル形式。最初に1425年と出る。彼女は野原で英国に支配されつつあるフランスを嘆き、それを歌う。女友達と話し、修道女のジェルヴェーズ(なぜか双子)や3人の聖女に会って、自分の意志を確認する。
後半は叔父との会話が中心で、女友達や両親とも話す。そして叔父と共に英国に支配されたオルレアンに向けて馬に乗って旅立つ。
歌や会話はシャルル・ペギーの本によるもので、言葉はかなり固い。ところが話し方は現代風だし、踊りも今風でラップのようなノリもある。この監督がいつもやるように同時録音らしいが、そのせいもあって、ヘタウマな感じで何とも生々しい。そのうえ演じるのが素人なので、ほとんど危ない感じさえある。
いわば行動に移るまでの若き日のジャンヌ・ダルクの葛藤を、現代の田舎に置き換えて実にリアルに見せることになぜか成功している。それは見事としか言いようがないが、それでも長い文語調のセリフや歌が続くので退屈ではある。
こんな映画は、例えばストローブ&ユイレの映画(『モーゼとアロン』!)に近いが、もっと今風で娯楽性がある。あるいはロメールの『聖杯伝説』も長らく見ていないが、こんな感じだったか。退屈だが強烈なリアリズムという点で、ペドロ・コスタの映画も思い浮かべた。
いずれにせよ、配給会社が買わなかった映画をこうして映画館で見られるのは実にありがたい。最近は外国映画の劇場公開が年に600本を超えているが、まだまだ見たい映画は多い。たぶん世界的に製作本数が爆発的に増えているのだろう。本当は配信系がこういう映画をやってくれればいいが、そうではないのが残念。
| 固定リンク
「映画」カテゴリの記事
- 『ディスクロージャー・デイ』のおもしろさと不可解さ(2026.10.07)
- 『ナギダイアリー』の新境地(2026.10.01)
- 『ビルマの竪琴』から『花と兵隊』へ(2026.09.27)
- 1年ぶりの海外で考えたこと:その(5)飛行機の映画(2026.10.03)


コメント