年末に『家へ帰ろう』
年末にスペイン=アルゼンチン映画『家(うち)へかえろう』を見た。最近は中南米の映画は時々とんでもない傑作があるから、アルゼンチンの監督と聞いて気になった。いくつか新聞評も見たし。
実にわかりやすい映画だった。アルゼンチンに住む88歳の仕立て屋アブラハムは、ナチスの収容所から逃げて来た自分を助けてくれた友人に会うために、ポーランドを訪れる。映画はその旅を描く。
飛行機で横に座る音楽青年、マドリッドの安ホテルの女主人、パリの駅で助けてくれるドイツ女性、ワルシャワの病院の看護師など各地の親切な人々に助けられて何とかウッチの実家までたどり着く。
その展開はあまりスムーズとは言えないが、アブラハムを演じるミゲル・アンヘル・ソラが頑固だがユーモアのある老人をリアルに演じて目が離せない。時おり挟み込まれるナチス時代の回想も胸を打つし、ラストの友人との再会には思わず涙を流す。
アブラハムは「ポーランド」という言葉を口にしたくなくて紙の切れ端に書いて持っており、さらにマドリッドからドイツを経ずにポーランドに行きたいとごねたり、ドイツに着いても地面に足をつけようとしなかったり。ドイツ人女性はナチスのユダヤ人虐殺を「今も私たちは恥じている」と言うし。
すべてを水に流す日本人には理解しがたいそうしたこだわりも、映画だからと見ていられる。考えてみたら、アルゼンチンからポーランドに行くのにマドリッドまで飛行機でそこから列車に行ったり、パリの駅の案内係は英語もできなかったり、出会う女性はみんなスペイン語ができたりと、すべては映画ならでは。
そんな作りものでも、93分という長さでスイスイと語り、最後の感動的なシーンもあまり引っ張らない。ある種のヘタウマのような佳作だろう。パブロ・ソラレス監督は本作が長編2本目。
そう言えば、年末で28日の朝日や毎日や日経では映画評を書く記者や評論家のベスト3(毎日は和洋各3本)が載っていた。そのなかで、『ボヘミアン・ラプソディ』と『君の名前で僕を読んで』を選んでいる人がいたが、ほかはともかくこの2本だけは理解できない。
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