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2019年1月 3日 (木)

年末年始の読書:『ジャポニスム』

去年から今年の春くらいまで、フランスでは「ジャポニスム2018」という一種の「日本年」が開催されている。単純に言うと日本関係のイベントをたくさんやっているわけで、日本でも「フランス年」はあったから2国間の協定なのだろう。ただ、「ジャポニスム」という呼称にちょっと違和感を覚えた。

「ジャポニスム」とは、もちろん19世紀後半のフランスで浮世絵を中心とした日本美術への熱狂を指す。印象派やポスト印象派に大きな美学的影響を与えたとされる。それをアニメを中心とした現代の日本ブーム=「クールジャパン」(恥ずかしい言葉!)と一緒にしていいのかどうか。

そんなことを考えながら、宮崎克己の新著『ジャポニスム 流行としての「日本」』を読んだ。この著者は『西洋絵画の到来―日本人を魅了したモネ、ルノワール、セザンヌなど』が抜群におもしろかった。今回は新書だが、読みごたえは前著に劣らない。

この本は簡単に言うと、19世紀末のジャポニスムをモネやゴッホなどの「山頂」だけで語るのは間違いというもの。「ジャポニスムは当時の市民たちが、自分たちの私的空間を飾ろうとする意欲、さらにはある一つの装飾運動とも深く結びついていた。したがってそのすそ野を構成するものの大半が「装飾」と結びついており、「アート」よりも「生活」という広大な基盤の上に成り立っていた」

そして1872(明治5)年に扇子が79万本、団扇(うちわ)が98万本輸出されていた事実を示す。モネの《ラ・ジャポネーズ》(1875-76)は、着物を着た白人女性が扇子を掲げ、後ろの壁に10を超す団扇が飾ってあるが、これは日常的風景だったのだ。

ただ、扇子や団扇は、陶磁器と違って明治政府の目録にも載らず、「浮世絵などとちがい、これらは日常的に使われ、あるいは飾られるものだったので、数年のうちに摩耗、退色して捨てられた。したがってコレクションの対象になりにくく、ミュージアムに収められることも少なかった」

「開国以後、第二次世界大戦までの総数は、貿易統計の数字が残っているものを換算すると、じつに9億本ほどに達する」。ただし1900年以降は日本製ながら西洋風の扇子や団扇になったといい、筆者はこうした双方向の文化の影響も重視してる。

いずれにしても、9億本の扇子や団扇が海外に出た記録はすごい。こう考えると、実は今のアニメブームのようなかなり大衆的なものだったのかもしれない。この本はいろいろほかにも示唆に富むので、また後日書きたい。


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