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2019年2月 7日 (木)

『フィリップス・コレクション展』は「すごい絵が、たくさん。」

20年くらい前のことだが、展覧会のキャッチ・コピーに「すごい絵が、たくさん。」と付けたことがある。木場の東京都現代美術館の「ポンピドー・コレクション展」だが、30万人を越す動員となった。その時は、美術関係者に「あのコピーはひどい」と言われたが。

この11日まで三菱一号館美術館で開催の「フィリップス・コレクション展」を見て、ふとこの言葉が浮かんだ。フランスの印象派を中心に「泰西名画」が並んでいるが、とにかくどの絵もくレベルが高い。

やはり何点か出ている画家が特に印象に残る。ボナールは、本格的な美術館で大きな個展を始めて意識的に見たのが、大学1年生の時の「ボナール展」(@福岡市美術館)だったこともあり、他人の気がしない。短い美術記者時代にも大きな記事を書いた。

この展覧会では1920年代に南仏で描かれた4点の秀作が並んでいる。一番好きなのは《開かれた窓》(21)で、窓から見た山と窓の上の日よけ、窓の下の壁の模様、右の窓ガラスに写る風景などが陽光のなかですべて等価に並んでいる。

映画ばかり見ているせいで、どうしても絵の中の長方形というか枠構造が気になるが、この絵はそればかり。そして右下の端っこには、光に半分埋もれた感じでたぶんバイオリンを持った若い女性が見える。陽光の氾濫の中で室内外のすべてが混じり合い、溶けてゆく。

《棕櫚の木》(26)は5月のカンヌを思い出す。棕櫚はカンヌ映画祭の最高賞「パルム・ドール」の「パルム」を指すが、カンヌの隣のル・カネで描かれたこの絵には、上に大きな棕櫚の葉が映画祭のマークのように茂っている。手前にリンゴを持つ女が半分溶けたようにいて、後ろには坂に建てられたいくつもの家と海が見えて、まさにカンヌの風景。

そのほか、数点あるモネやセザンヌも傑作だし、ドガの大きな踊り子の絵も嬉しくなる。そんななかに、イギリスのコンスタブル、スペインのゴヤ、イタリアのモランディなどが1点紛れ込んでいたりするのも楽しい。後半にはピカソもたくさんあったが、それ以前に充足し過ぎてきちんと見られなかった。

「フィリップス・コレクション」という名の通り、19世紀末にアメリカの裕福な実業家の家に生まれたダンカン・フィリップスが収集したものだが、それぞれの絵についてのこのコレクターのコメントがパネルで書かれているのもわかりやすい。あくまでそれぞれの画家の特色が一番出ている秀作だけを集めようとした様子がよくわかる。

展覧会終盤なので平日(今週は21時まで)でも混んでいるが、一見の価値あり。

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コメント

フィリップス・コレクションは本当に素晴らしい作品、展示でしたね。

投稿: さかた | 2019年2月 8日 (金) 21時01分

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