« 昔、『噂の真相』に書かれた | トップページ | マスクをしたら »

2019年2月12日 (火)

『ちいさな独裁者』の救いのなさ

ドイツのロベルト・シュヴェンケ監督の『ちいさな独裁者』を劇場で見た。この監督は昔「ドイツ映画祭2005」で『タトゥー』(2002)を上映したことがあったが、その後ハリウッドに行って『フライトプラン』や『RED/レッド』など大作を撮っていた。今回は久しぶりにドイツで撮ったというのが気になった。

物語は、敗戦間際のドイツで、大尉の軍服を盗んだ男が大尉になりすまし、やりたい放題をする、というもの。私はどんな面白い展開になるかと期待していた。

ところが、ひたすら暗い。大尉になりすましたヘロルトは出会う兵士達を子分にして親衛隊を作り、脱走兵向け収容所にたどり着く。そこで早く脱走兵を処分したい兵士に唆されて、虐殺を命じる。収容所長は違法だと言うが、ヘロルトはこれはヒトラーからの直接の命令だと突っぱねる。結局多くの脱走兵が無残に殺される。

そこに期待したようなドラマはなかった。ひたすら人間の見にくい面がクールに展開するので、本当に救いがない。それでも全く退屈しないのは、グイグイ押す監督のハリウッド仕込みの演出力で、俳優たちは個性豊かでセットも迫力があり、音楽や音も巧みに盛り上げるからだろう。

敗戦末期に軍隊が荒れてとんでもないことが起きるのは、日本でも深作欣二の傑作『軍旗はためく下に』(1972)で見た通り。誰が敵かわからなくなる。『ちいさな独裁者』もこれが実話というから、見ていてそら恐ろしくなってくる。映画が終わるとその後この「大尉」がどうなったかが、クレジットで出てくる。

さらにクレジットではその「へロルト親衛隊」が現代のドイツに現れた様子を写す。実にうまい。この映画のなりすましとその後の残虐な行為が、まるで現代でもありうるかのよう。

実は、先週末の金曜各紙の映画評ではおおむねそのように評価されていた。そんな感じで評論家や記者がほめやすい映画だが、個人的にはあの「大尉」にもっとドラマチックなことが起こると期待していただけに、ちょっと残念。それにしてもナチスものは、ハリウッドもドイツもほかのヨーロッパの国もよく作る。現代映画の一大ジャンルのようだ。


|

« 昔、『噂の真相』に書かれた | トップページ | マスクをしたら »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『ちいさな独裁者』の救いのなさ:

« 昔、『噂の真相』に書かれた | トップページ | マスクをしたら »