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2019年2月14日 (木)

六本木で日本美術の個展2つ

六本木で始まったばかりの日本美術の大きな個展を2つ見た。1つは3月31日までサントリー美術館で開催の「河鍋暁斎展」で、幕末から明治の動乱期にかけて活躍したこの天才画家を120点余(2/3は途中で展示替えなので、実際は1度に80点くらい)で見せる。

長い間展覧会の仕事をしていたが、もともと美術史はきちんと学んだことがない。フランスに留学したので欧州の美術館は一応回ったが、日本美術は(今も)本当に知らない。この画家の名前も知ったのは、新聞社に入ってから。先輩の女性が河鍋暁斎展を準備中で、「それ誰ですか」「えっ知らないの」という感じ。

前に(たぶん)江戸東京博物館で個展を見た時の印象は、「明治前半の戯作者」だった。宴席で絵を描き、妖怪や幽霊や地獄をも見せる。今回だと《鷹に追われる風神図》のようなありえない奇想天外な内容だ。なぜか風の神が鷹に狙わるのか知らないが、真上から迫ってくる鷹に怯えて、風を入れた布を持って退散している滑稽な図。

あるいは、『鯰の船に乗る猫』は、猫が自分より大きな鯰がひっくり返った腹の上に鎮座している。それは川の中で、小さな猫2匹がその鯰を引っ張っている。

今回見て思ったのは、こうした戯作が実は狩野派の周到な学習のもとに成り立っていること。花鳥風月から観音図、風神雷神、美人絵、鶴や虎など古典的な襖絵の題材を、ある時は色彩豊かに、ある時は墨絵で描く。この展覧会の副題が「その手に描けぬものなし」だったが、まさにあらゆる注文に応える江戸のお抱え絵師の伝統を継いでいる。

また「古画に学ぶ」というセクションがあり、河鍋暁斎の絵と模範とした元の絵を並べていて興味深い。例えばよく日本画で出てくるテーマに「放屁合戦」があるが、河鍋の絵と江戸期の絵が並べているので、躍動感あふれる河鍋の筆致の違いが見える。「九相図」とは死体が地面に捨てられて腐ってゆくさまを9段階で見せるものでこれも日本画によくあるが、これも河鍋の絵と元となった絵を比較できる。

出品作品は、河鍋暁斎記念美術館を中心に国内各地の美術館・博物館に加えて、大英博物館やイスラエル・ゴールドマンの個人コレクションからも来ている。わずか120~30年前の日本にこんな天才画家がいたなんで本当に信じられない。その教養と観察力と表現力の深さ、多様さは、現代の日本人には到底手が届かないだろう。

もう1つの六本木の個展は森アーツセンターギャラリーで3月24日まで開催の「新・北斎展」だが、さらなる天才のこの画家については後日書く。

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