『ビール・ストリートの恋人たち』の限界
バリー・ジェンキンス監督の『ビール・ストリートの恋人たち』を劇場で見た。アカデミー賞の授賞式を(途中まで)見ていたら、この映画で助演女優賞を取ったレジーナ・キングが出てきて、見たくなった。先日『アリータ』のようなおバカな映画を見た反動もあった。
確かにこの映画は『アリータ』とは正反対だ。黒人作家ジェームズ・ボールドウィンの小説が原作で、脚本・監督は『ムーンライト』でアカデミー賞の作品賞など3部門を制したバリー・ジェンキンス。
ところが実は、私は『ムーンライト』が今一つピンと来なかった。ブログだけでなく、わざわざ朝日新聞のWEBRONZAで「深刻さの流行」として、気に入らない理由を書いたくらい。
今度は『ムーンライト』ほど作り込みがなかったせいか、かなりおもしろかった。映画は若い黒人カップルの苦難の日々を描く。19歳のティッシュ(キキ・レイン)の恋人ファニーは22歳で、無実の罪で刑務所にいる。ティッシュは妊娠したことを刑務所のファニーに告げ、後で家族にも知らせる。
映画は何とか刑務所から出そうとする家族の苦労を描きながら、2人の少年時代から恋愛、ファニーの冤罪などを回想として入れてゆく。
例によって流れるようなカメラが2人や家族を取り囲み、2人が本当に魅力いっぱいに見える。白人の多くは冷たいが、なかには優しい者もいる。黒人同士でもファニーの母親はティッシュを嫌っていたりする。ティッシュの母はファニーの冤罪を晴らす鍵を握る女性を訪ねて、プエルトリコまで行く。それでも大きな壁が立ちはだかる。
映画は何も解決しないまま、プツリと終わる。それでもそこまでに観客は人生の素晴らしさと悲哀を十分に味わった気がする。映像も脚本も文句ない。ただ、「気がする」ところがアメリカのインテリ映画の限界かも。
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