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2019年3月17日 (日)

『奇想の系譜展』を堪能する

4月7日まで開催の東京都美術館の「奇想の系譜」展をようやく見た。もちろんこの題は辻惟雄氏が1970年に書いた名著『奇想の系譜』から来ている。最近は若冲や曽我蕭白など、この本で取り上げた画家が流行っているので、何となくその波に乗った安易な企画かと思っていた。

ところが大違いの真剣勝負の展覧会だった。最初に若冲の大きな《象と鯨図屏風》があってぶっ飛ぶ。これは確か近年見つかってMIHO MUSEUMが購入したもののはず。数年前にサントリー美術館で初めて見て驚いた。左側で海の中で真っ黒な鯨が水を吹く。右からは真っ白な象が吠える。

ほかにもこの滋賀の宗教法人の美術館からの出品が数点あって、本気度が伺える。さらにプライス・コレクションからの出品も。若冲10点ほどだが、秀作ばかり。プライス・コレクションの《虎図》の虎の赤い涙を見ると、本当に泣けてくる。

そして曽我蕭白の劇画のようなおどろおどろしい世界が続く。まず、《群仙図屏風》に圧倒される。全部で8人の男女の仙人は青、赤、白をまとい、龍に乗ったり、蝦蟇を背負ったまま耳を掻いてもらったり、何人もの子供たちを連れ歩いたり。ド派手のやりたい放題の絵。

《雪山童子図》は青鬼と赤い服を着て胸をはだけた雪山童子が対峙する。童子の髪は長く、胸に膨らみがあるので娘かと思ったが、そうでもないのか。とにかくエロチック。

この2人と岩佐又兵衛、白隠慧鶴、鈴木其一、歌川国芳はいろいろな展覧会で見てきたが、今回は粒揃い。長澤芦雪や狩野山雪はこれまできちんと見たことがないが、芦雪の《白象黒牛図屏風》など、まるで若冲のように楽しい。《群猿図襖》も10匹ほどの猿が本当に見飽きない。

私は普通、美術展を見るのが早い。「だいたいわかった」と好きでないものは15分、気に入ったら40分くらいで1つの展覧会を見終わるが、今回は1時間以上いてしまった。宗達、光琳、応挙なととも、歌麿、北斎などとも違う「奇想」の江戸絵画を、選りすぐった作品でわかりやすく見せていたからだろう。まさに副題の「江戸絵画ミラクルワールド」の通り。

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