中国映画『芳華』に考える
4月12日公開の馮小剛(フォン・シャオガン)監督『芳華』を見た。「4000万人が涙した」「激動の嵐に包まれた70年代中国。時代に翻弄された若者たちの美しく切ない青春の日々」というキャッチに惹かれた。135分だし、イタリア映画の『輝ける青春』のようなものだろうと思ったから。
確かに、1960年代から現代までのイタリアの一家族を描いた『輝ける青春』に近い部分はあった。『芳華』は、1976年から80年までを中心に、終盤には90年代から現代まで見せる。
どちらもさまざまな人々の時代の転換期の生き方を見せるが、『芳華』は軍隊の文芸工作隊(文工隊)の面々が中心となる。文工隊は軍隊慰問団のようなもので、楽隊、ダンス、美術などからなる。映画は田舎から出て来たシャオピンがこの文工隊に加わるところから始まる。
シャオピンは慣れずに苦労するが、彼女を助けるフォンに惹かれていく。彼らは毎日練習を続けるが、毛沢東の死去、四人組の逮捕などで雰囲気は変わってゆく。フォンはディンディンが好きで打ち明けるが、政治部に告げ口されて、ベトナムとの戦争に駆り出される。
フォンのいない文工団にやる気を失ったシャオピンは、看護師として戦場に送られる。1980年に文工団は解散され、最後の公演をする。そして団員はそれぞれの道を歩む。しかし、90年代になって彼らは再会する。
シャオピンの実父は労働改造所に送られていたり、ほかにも親が文革で追放されていたり、逆に党幹部だったり。政治的な背景はあるが、団員たちの生活は青春そのもので、毎日大騒ぎだ。テレサ・テンの音楽に夢中になる団員たち。ダンサーの女性たちのダサいブラジャーといったら。
私がまず驚いたのは、彼らの踊りや音楽。モダンダンスを基本に、京劇のような動作もする。そして中国の伝統的な音楽を今風に聞かせる。女性のダンサーが軍服姿に背中に小銃を抱えて踊る場面などは、まるでロシア革命直後のソ連の絵画を思い浮かべた。あるいは今の北朝鮮の演劇か。
1980年までこの劇団が続いていたとは。考えてみたら、ここに出てくる団員たちは私と同世代。私とはあまりに違う青春だが、時代の渦に巻き込まれてゆく群像劇に思わず引き込まれる。特に終盤はホロリと来る。
中国で大ヒットし、いくつもの賞を取っているが、たぶん私の世代が「ああこうだった」と涙しながら見ているのだろう。個人的には『輝ける青春』ほどは泣かなかった。
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