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2019年3月18日 (月)

大音響で見る『ローマ』

初めてイオンシネマに行った。もちろんアルフォンソ・キュアロン監督の『ROMA/ローマ』を見るためだが、せっかくなので一番大きな500席のスクリーンで見た。Ultiraというアイマックスのような包み込む大スクリーンとdtsXの大音響だった。

平日の昼間はガラガラだったので、予約した席よりも少し前に移動して、文字通り真正面に座った。すると、最初に家の中庭兼車庫に流れる水の音さえも、すごい迫力で迫ってくる。そして遠くの鳥の声、物売りの声、飛行機の音などが少しずつ重なる。水面に遠くの飛行機が写る。

そこに一家の父親が車で帰ってくる音は、まるで戦車か何かのよう。おまけに彼は車内では大音響でクラシックを聞いているし。それから最後まで皮膚感覚的に音に囲まれて、驚き続けた。

地震のシーンは本当に地鳴りがした感じだし、街頭デモも海の大波も見ていて飲み込まれそう。この映画は去年のベネチアで見たが、音響はもちろんベネチアのプレス試写会場よりずっといい。これはまさに「音の映画」だった。

映画は女中のクレオを中心に進む。彼女はフェルミンという男と知り合って関係を持つが、妊娠したことを伝えると男は逃げてゆく。一方で女中として働く家では、主人はカナダで仕事で数週間過ごすと告げて去ってゆくが、実は妻子を捨てて別の女と暮らしていた。

クレオは子供用のベッドを買いに行ったところで破水し、病院に担ぎ込まれる。女主人は子供たちとクレオを連れて海に行き、夫が帰ってこないことを子供たちに告げる。主なドラマとしてはそれだけで暗い日常が続くだけなのに、135分間、興奮の渦だった。

全編白黒で、カメラは部屋の中も街頭も縦横に長回しで動き回る。そこから1971年のオリンピック直後のメキシコの暗澹たる雰囲気が随所ににじみ出す。なぜクレオの恋人は武道を始めたのか、なぜそれがデモ隊を阻止する部隊に組み込まれるのか。夫はなぜ家を出たのか。あらゆる理由はわからない。

終盤の海水浴で、クレオは溺れそうになった2人の子供を助ける。そしてそこに女主人とほかの子供2人がやってきて、6人が抱き合う。そこに後ろから夕日が差す。それだけなのに、聖なる奇跡が起こったような感動を覚える。

白黒でカメラを縦横に動かして長回しで撮った映像と音は、徹頭徹尾日常のリアリズムなのに、謎の大宇宙が展開する。これは21世紀の新しい映画だと思った。ネットフリックス映画だからパソコンやテレビで見られるが、ぜひとも大画面、大音響で見ることを勧めたい。今後イオンシネマからアート系映画館にも公開が広がるが、シネスイッチ銀座やアップリンク(渋谷の方)では少しもったいないかも。

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