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2019年3月 8日 (金)

『洗骨』のまともさ

お笑い芸人のガレッジセールのゴリが監督した映画と聞いて全くノーマークだったが、友人がいいと言うので劇場に見に行ったのが、『洗骨』。本当は自分の母が亡くなったこともあり、母の骨が出てくる映画は乗り気がしなかったが。

これが見てみると、家族を描くずいぶんまともな映画だった。舞台は沖縄の粟国島で、そこでは死者を風葬して数年後に遺族が骨を洗う「洗骨」という習慣が残っている。

映画は母の死から始まる。東京から長男(筒井道隆)が、名古屋から長女(水崎綾女)が帰ってくる。父(奥田瑛二)は酒浸りで、隠れて泡盛を飲んでいる。このあたりは普通だが、老いたダメおやじを演じる奥田瑛二が異様で存在感を示す。

そして4年後。洗骨のために長男も長女も帰ってくる。長男はアル中の父を軽蔑し、長女は未婚だが何とお腹が大きい。それに父の姉(大島蓉子)やその娘夫婦も加わって、洗骨の準備が進む。

みんなが淡々として故郷の風習をこなしていくなかで、人間関係が明らかになり、思わぬ展開も訪れる。あちこちにユーモアが混じる悲喜劇だが、その描写の細かな積み重ねが実にリアルでだんだん感情移入してゆく。

筒井道隆演じる東京で大企業に勤める長男が、いやだった父とだんだん近づく感じが何ともうまい。美容師の長女が兄や父の髪を切る場面も心に沁みる。

演出はオーソドックスで音楽もいささか過多だけど、洗骨という独特な儀式がピタリと映画のドラマ展開に入っているので、思わず見入ってしまう。個人的に母の普通の火葬を見てきたばかりの私には、何とも愛情のこもった風習に思えた。

監督のゴリこと照屋年之が沖縄出身のせいか、中心となる俳優たちが本土出身なのにきちんと沖縄の言葉を話す(たぶん)。父の姉を演じた大島蓉子は、その南方的な迫力に本当に沖縄出身かと思ってしまったが、HPを見たら東北だった。照屋監督は評価の高い短編が何本もあり、長編も1本あるとは知らなかった。

そういえば、もう1本の母の骨の映画『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った』もひょっとしたらおもしろいのだろうか。

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