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2019年4月 7日 (日)

岡上淑子のシュルレアリスムに浸る

フェイスブックで誰かが書いていたのを見て気になっていたが、友人からのメールでもうすぐ終わると知って見に行ったのが今日まで東京都庭園美術館で開催の「岡上淑子」展。実は名前さえ知らなかったが、まさにフランスのシュルレアリスムのようなフォト・コラージュをネットで見て興味が湧いた。

副題は「沈黙の奇蹟」で、「材料はノリとハサミ、それからあなたの指先だけ」というキャッチがついている。確かに作品の大半は、雑誌の写真を切り抜いて、コラージュしただけだ。しかし女性の顔の部分がなかったり、馬の頭だったりと、その雰囲気はまるでエルンストやダリなどのシュルレアリストを思わせる。

1928年生まれで、1950年に文化学院デザイン科に入学して、コラージュを始めたという。フランスのシュルレアリスムのことは知らなかったが、2年ほどたって美術評論家の瀧口修造に会い、エルンストの作品を知って影響を受ける。

活動は1956年までのわずか7年間。瀧口の推薦で東京国立近代美術館で作品が展示されたり、画廊で何度か個展を開いたり、雑誌の挿絵にも使われる。それなりに知られた存在だったはずだが、57年に結婚して活動をやめて、1967年には離婚して故郷の高知へ。それからほぼ忘れられていたが、昨年1月に高知県立美術館で個展が開かれた。そして今回が東京の美術館では初の個展という。

コラージュされている元の写真はアメリカのファッション雑誌などから取ったもの。すべては西洋のイメージで、本当にマグリットのよう。7年のうちに作品はより緻密でエレガントなものになってゆく。55年あたりからは迷いが出たのか、自分で写真も撮り始める。高知に行ってから書いた日本画もあったが、普通の薔薇の絵なのにどこかシュール。

作品は高知県立美術館を始めとして、東京国立近代美術館や個人の所蔵だが、ヒューストン美術館からも10点ほどあるのにびっくり。海外でも知られていたとは。瀧口の写真や岡上と彼との書簡なども展示されているし、京都服飾文化財団所蔵の50年代のフランスのドレスもあるなどなかなかの力業で、この美術館の佇まいにぴったり。

日本が占領から抜け出した頃に、こんな西洋的なコラージュを作った女性がいたなんて、びっくりである。もし当時アンドレ・ブルトンやマグリットが見ていたら驚いただろうな、などと想像した。

今もご存命のようなので、今年91歳。20代の時に作ったコラージュが、70年後に美術館で個展が開かれるのをどういう思いで見たのだろうか。作品と同じくらい、彼女の人生に興味が湧いた。瀧口修造に出会ったのも、恵泉女学園高校で一緒だった友人(後の武満徹夫人)から武満を紹介されて瀧口につながったというから、人生何が起こるかわからない。

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