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2019年4月28日 (日)

やはりおもしろいイタリア映画祭:その(1)

イタリア映画祭は2001年に自分が作ったものだが、最近は時間がなくてはあまり見ていなかった。今年は余裕ができたので久しぶりに何本も見た。最初に見た3本の感想は、「ベテランも若手監督もなかなかやる」というもの。

一番驚いたのはパオロ・ズッカ監督の『月を買った男』。1972年生まれで長編3本目だから若手とは言えないが、その奇想天外な発想は図抜けている。最初は笑えない冗談のように始まるが、途中からドンドンおもしろくなった。

出だしは、アメリカやフランスやイタリアの情報機関に、サルデーニャ島で月の所有者になった者がいるという情報がはいるというもの。そこで潜入捜査に雇われたのがケヴィン。彼はサルデーニャ出身だが、黒い髪をブロンドに染めて素性を隠していた。ケヴィンは生粋のサルデーニャ人の老人のバドーレから特訓を受けて、髪をもとに戻してサルデーニャ島に入る。

そしてサルデーニャの住民たちとのてんやわんやの後に「月を買った男」にたどり着くのだが、後半の展開がすごい。サルデーニャ島をめぐるステレオタイプをからかいながらも、神秘的な要素があちこちに垣間見える。月を買った男の妻の話を聞いているうちに、サルデーニャ島が月のように見えてくる。

イタリアの警察が潜水艦を使って攻めてくるが、島民たちは月の力を借りて追い返す。その神話的な展開に目を見張った。それにしても、ケヴィンが月を買った男にご馳走になるサルデーニャの海の幸のおいしそうなことといったら。この監督は相当の才能の持ち主なので次回作が楽しみ。

『盗まれたカラヴァッジョ』は、『修道士は沈黙する』の1959年生まれのロベルト・アンド―監督の新作。映画の脚本家のゴーストライターの女性ヴァレリア(ミカエラ・ラマッツォッティ)を主人公にしたサスペンスで、1969年にマフィアがカラヴァッジョの絵を盗んだ事件を題材に、映画製作の虚実を描く。

引退した捜査官の老人(レナート・カルペンティエーリ)がヴァレリアに物語を提供し、それを知ったマフィアが脚本家を誘拐するという展開で、二重、三重のサスペンスが楽しめる。後半には政治家もからみ、細かく張り巡らされた展開に最後まで引っ張られた。ヴァレリアの母役でラウラ・モランテが出ていたのも嬉しかった。これは劇場公開が決まっている。

もう1本のマルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督の『女性の名前』は、ベテランが軽く撮った感じの社会派映画だが、後日書く。

 

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