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2019年4月11日 (木)

都写美で2本

恵比寿の飲み会の前に、東京都写真美術館で興味深い展覧会を2本見た。どちらも5月6日までだが、1つは「写真の起源 英国」展。この美術館は毎年春に初期写真の展覧会をやるが、これがいつも抜群におもしろい。今回は英国の写真の起源に迫る。

写真の起源と言えば、フランスのダゲールが1839年に発表したダゲレオタイプが知られる。しかし英国のタルボットは、それ以前に現代につながるネガ・ポジ式の写真術を開発していた。この展覧会は、その写真のきっかけとなるカメラ・ルシーダという機械を使ったデッサンの展示から始まる。

単なるスケッチだが、妙にありがたみがある。タルボットはスケッチ用の像を薬品を使って定着させたわけだが、1835年頃の紙製のネガ原版やその写真が展示されている。クレジットを見ると、それらは何と大英博物館や英国の国立科学メディア博物館から来ているではないか。

英国で最初に撮られたのは、風景が多い。《トラフィルガー広場からみたホワイトホール、ロンドン》は英国のヴィクトリア&アルバート博物館の所蔵。それから植物の葉や、タルボットの娘などの人物。写真によっては常時光に当てないために幕がかかっていて、観客は自分の手で開けて見る。その仕草の神秘的なことといったら。

最初、てっきりエロチックなものが出てくるかと思ったら、ウェストミンスター寺院やロチェスター橋。それでもなぜかありがたい気がする。1840年代から50年代にかけての風景を見ていると、1951年のロンドン万博が現れる。クリスタル・パレスの写真を見るだけで、くらくらしてくる。

後半には50年代後半から英国人が外国で撮った写真が並ぶ。もちろんベアトが撮った日本もある。これらの初期写真は、映像によって風景や人物を固定させることへの情熱に満ちている。

もう1つの展覧会は「志賀理江子 ヒューマン・スプリング」展で、東北大震災後を撮ったかなりインパクトの強い展覧会だった。会場には、高さ1m、幅1m×横2mほどの箱が20個ある。箱の上と左右両横の5面に写真が張り付けてある。避難所の光景、逃げ惑う人々、夜の桜、ゴミ捨て場などなど、すべてが夜に撮られたもの。

そして展覧会の一番奥から見ると、どの箱にも青い夜の中に赤く照らされた男の顔の写真が貼られている。まるで見る者を追いかけてくるような顔。どこを撮ったのか何の説明もないが、妄想のように広がる永遠の夜の世界に、震災の痛みの深さが刻み込まれている。

全く対照的な展覧会だが、2つ立て続けに見ると、かなり満足感があった。

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