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2019年4月 3日 (水)

『最後の恋』とは

自宅近くの神楽坂駅そばにある「かもめブックス」でよく本を買う。お店に漂う雰囲気がいいし、並べてある本の趣味がハイレベル。同じ場所に昔から別の本屋があったが、そこがつぶれる時に、近くの本の校正会社が新しい書店を立ち上げたのが5年近く前だった。

入ると、小特集の棚がある。そこにあると、どの本もいい感じに見えるから不思議だ。たぶん恋愛特集か、女性作家特集で買ったのが、『最後の恋』という文庫。阿川佐和子、谷村志穂、角田光代、乃南アサ、三浦しをん、沢村凛、松尾由美、柴田よしきの8人が「最後の恋 つまり、自分史上最高の恋」というテーマで短編を書いている。

2、3年前に気楽に読めるだろうと買っていて、最近になって読んだ。なぜ買ったのかは忘れてしまったが、たぶん女性作家らしい鋭い恋愛の見方があるとでも思ったのか。

正直に言うと、全体としてはあまりおもしろくなかった。たぶん短編だと、プロットばかりが目について、小説として味わう感じにならないのかも。一番おもしろかったのは、松尾由美の『わたしは鏡』。この作家は名前も知らなかった。

舞台は大学の文芸部で、3年生の編集長・鈴木比呂は、原稿集めに追われている。そこにやってきたのは2年生の田村いずみ。比呂は高橋という4年生に憧れていて、それはいずみにも気づかれているようだ。

ある日部室に無記名の短編が置かれている。「わたしは鏡」という題の短編で、その全文が「小説内小説」の形で挟まれる。それは美容室に置かれた鏡を主人公に、秘められた愛を語るという寓意的な内容で、なかなか読ませるものだった。

2人はそれが誰の手になるものか議論する。比呂は先輩の高橋かもしれないと考えるが、最後にいずみの口から自分が書いたと知らされる。彼女は性同一性障害で、実は比呂のことが好きだったと抱きしめられる。そして大学をやめて男性として生きてゆくと告げて去ってゆく。この結末に私は本当にのけぞった。

ほかの小説はいかにもな作り話が多かったが、角田光代の『おかえりなさい』が老婆に愛される大学生の話で抜群だった。電車に乗って駅6つくらいで1本の小説が読めるので、通勤・通学にはちょうどいいかも。

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