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2019年5月19日 (日)

都写美から文化村へ

長年美術の仕事をしていたので、映画を見ると近くにある美術館に寄ることが多い。ガレルを見に恵比寿に行って東京都写真美術館で宮本隆司展などを見て、映画美学校で試写を見てから文化村のザ・ミュージアムで「印象派への旅」展を見た。

都写美の「宮本隆司 いまだ見えざるところ」展はいくつかのテーマに分かれているが、どれも印象に残った。まず驚いたのは最初の「ごあいさつ」の類がないこと。それから各章の解説もなければ、作品のキャプションさえなく、作品番号だけしかない。手渡しの作品リストで題名がわかる。

最初の「Lo Manthang 1996」は、かつてムスタン王国と呼ばれたネパールの自治区のローマンタンを撮ったもの。どこかに「秘境」が残っている。次の「東方の市より」は80年代後半から90年代前半のアジア各地の市。台北もホーチミンも徳之島も同じ空気が流れている。

次は「建築の黙示録」は解体寸前のサッポロビール恵比寿工場を写す。もちろんそこがこの都写美になったわけだから、ものすごい臨場感がある。次の「塔と柱」の後の「シマというところ」が一番おもしろかった。どこかの南の島に住む人々や風景を撮った写真が大小さまざまに40枚ほど。動画も1枚あって、モニターに揺れる草が写る。あちこちから濃厚に「生きている」感じが匂う。

昭和の頃はこんな濃い顔の人々が島でなくても少なくとも田舎にはたくさんいたが、今はみんなつるんとした顔になった。この平成の30年は何だったのか。これは《金見》という題がついているが、帰って検索してみたら徳之島の地域だった。かつてこの写真家は香港の九龍城砦を撮った写真で有名になった。今も廃墟や捨てられたような場所に住む人々の魅力的な姿を撮り続けている。

所蔵作品からなる「場所をめぐる4つの物語」は、妙に宮本隆司展と呼応する。特に奈良原一光の軍艦島の連作は、その活気と閉塞感が奇妙な輝きを見せていた。数年前に行ったその島に時の感触を思い出す。山崎博の長時間露光の写真は、1982年には東京にあっただろうゆっくりした時間を思わせた。

都写美の写真の強烈さに比べると、文化村ザ・ミュージアムの「印象派展への旅 海運王の夢ーバレル・コレクションー」の印象は弱かった。ドガやセザンヌやゴッホの秀作があるのに、印象派前やアカデミズムの絵画と混じって「室内」や「郊外」や「川辺」などテーマごとに並んでいたので、それぞれの画家の個性が見えにくかった。 

それでも、19世紀後半から20世紀にかけてスコットランドの海運王が集めた絵画、というのはよくわかる。いかにも海と太陽が好きな人が集めたような絵が揃っているから。このあたりのテーマは19世紀末に映画を発明したリュミエール兄弟の映画と重なって来る。

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