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2019年5月20日 (月)

『きみと、波にのれたら』の水と火に酔う

6月21日公開の湯浅政明監督のアニメ『きみと、波にのれたら』の試写を見た。この監督は、2年前に『夜は短し歩けよ乙女』『夜明け告げるルーのうた』を見てその表現の自由さに仰天した。さて今度はどうなるかと期待したら、何と純愛ものだった。

千葉の小さな港町へ越してきたひな子は、1人でサーフィンを楽しんでいた。住み始めたアパートの近所の火事がきっかけで消防士の港(みなと)と仲良くなる。2人は恋に落ちて港はひな子にサーフィンを習うが、ある時港は海で死んでしまう。

主なできごとはそれだけで、港が亡くなるのは90分強のうち30分過ぎくらいか。そして実はその後がよりおもしろい。ひな子は水に浮かぶ港の姿に歌いかけると彼が蘇ることを知る。それからはいつも水筒に水を持ち歩き、あるいは家の中ではゴムの大きな人形に水を入れて、港と話す。

2人が仲良かった頃に、一緒に歌った歌があった。水面を見ながらひな子がそれを歌うと、いつの間にか港も一緒に歌っている。港には消防士の後輩のわさびと妹の洋子がいた。後半はこの2人が少しずつ活躍し始め、ひな子を引っ張ってゆく。

終盤の火事と水の戦いのシーンには、思わず手に汗を握ってしまった。これほどまでに生き生きとした水や火を描いたアニメがこれまでにあっただろうか。そもそも港の職業が消防士で、映画の最初から火を水で消す場面が写る。港がひな子にサーフィンを習うことで水の領域が拡大し、さらに亡くなってあらゆる水に住む存在になる。そして最後は高層ビルに燃え盛る火に水が挑む。

実を言うと個人的にはこの純愛物語にはあまり入り込めなかったが、若い観客は相当に感情移入できるのではないか。私はストーリーとしては、『夜は短し歩けよ乙女』のような滅茶苦茶な話の方が好きだが。

それにしても、今回の水と火の表現は凄まじい。とりわけ、水という透明なものをここまで映像化するとは。これは実写ではできない。見終わってもまだ水の中にいるような感じで、口からブクブクと泡が出てきそうな気がした。

 

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