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2019年6月 6日 (木)

『僕はイエス様が嫌い』の計算された直球

奥山大史監督『僕はイエス様が嫌い』をようやく劇場で見た。去年のサン・セバスチャン映画祭で最優秀新人賞を22歳の最年少で受賞し、その後も海外の複数の映画祭で受賞し、東京フィルメックスでも話題になったので、期待していた。

見終わった感想は、予想したものとだいぶ違ったが、鮮やかな直球勝負だった。東京から田舎のキリスト教系の小学校に転入した少年ユラの物語。ユラはそもそもキリスト教になじみがないし友達もできずに戸惑うが、次第に小さなイエス様が見えるようになり、会話を始める。

小さなイエス様のおかげか、千円がもらえたり、学校ではカズマという友達ができて一緒にサッカーをしたり友だちの別荘に泊まりに行くが、ある時カズマに事件が起きる。それまで自分の感情をはっきり表現しなかったユラは、最後に思い切った行動に出る。

映画はユラとそのまわりを引き気味の固定ショットで写す。ユラの心の中が全くわからず、とんでもないことが起こるのではと見ていてハラハラするが、そんなことはない。そもそもユラの父母も祖母も、学校の先生も牧師も友人も、この映画では誰の心の中も見せようとしない。そういう突き放した雰囲気の中で、自宅の食事や風呂や学校のショットが淡々と挟み込まれる。

ドラマらしきものは後半に起こるが、その後も日常は続いてゆく。音楽もクラシックを中心にグッと抑えた感じ。見終わると、自分も小さい頃の日々はこんなものだったなあ、と思わず思ってしまう。

少年の心を表すのに十分に抑制を効かせて、その不可解な行動をストレートに見せた強烈な作品だ。これは単なる素朴さや素直さとは次元の異なる、計算され尽くされたカットの勝利である。映画で何を見せるべきかを考えに考えて撮った、早熟な若者だと思う。今後が大いに期待できるが、既に完璧なセンスを身につけているだけに、器用貧乏にならなければいいが。

いずれにしても、大学4年生の時にここまでの映像が作れたことに驚く。映画を学ぶ学生は必見の作品である。

 

 

 

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