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2019年6月16日 (日)

『さよならくちびる』のうまさを楽しむ

塩田明彦監督の『さよならくちびる』を劇場で見た。友人たちの間で賛否両論だったから。私の一番の感想は、「うまいなあ」というもの。もともとこの監督は、作り込みというか仕立てが巧みだが、今回はドキュメンタリー風に撮っているからなおさらそれを感じた。

映画は不機嫌そうな3人が車に乗る場面から始まる。運転するのは「全国7都市でライヴをして解散するんだから」と言うシマ(成田凌)。助手席に座って煙草を吸うのはハル(門脇麦)で、後ろにレオ(小松奈菜)がいる。彼らが何者なのか、なぜ解散するのかは説明がなく、映画を見ているとだんだんわかってくる仕組み。

作詞作曲はハルで、レオとギターを弾きながら2人で歌う。シマは後ろでタンバリンやエレキなどを控え目に弾き、マネージャー的役割をしている。3人は不機嫌であまり話さないが、ライブの歌を聞いていると何となく気持ちはわかってくる。

さらに過去の映像が挟み込まれる。ハルは洗濯屋さんでバイトをしていて叱られているレオに「バンドをやらない」と声をかける。シマはハルにドバイで金を稼いでいたと語るが、実はバンドをやっていたらしい。さらにシマはハルに頼まれて、ハルの実家で恋人のふりをし、彼女の過去を知る。

各地での演奏シーンが何度も出てくる。これが見ているだけで気持ちがいい。普段は不愛想なハルとレオなのに、舞台では優しく観客に話しかける。最初は客もあまり集まらないが、解散のうわさが広がって満員になってくる。3人はそれぞれ一方通行の恋をしているようだが、決してはっきり言わない。

そして感動的な函館のラストコンサートの後に、洒落た終わり方が来る。見事に乗せられた感じ。有名な俳優を使いながら、実際に彼らに演奏をさせ歌わせる。そして各地のライブハウスで公演をする。本当はエキストラの客も、本物にしか見えない。3人の感情や性格はあくまで歌詞や過去の映像で見せるだけ。

自然さを装いながら実は巧みに作り込まれた青春映画だけど、見終わっていい気持になった。さて、若い人はどう思うのだろうか。

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