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2019年7月 2日 (火)

「新聞の映画評」評:『新聞記者』

毎週金曜の夕刊各紙は映画評が載るので、取っている「朝日」のほかに「毎日」「日経」「読売」を買うことにしている。おおむね大きく取り上げる映画は同じことが多い。先週末公開だと『凪待ち』と『COLD WAR あの歌、2つの心』あたり。

先週末に新聞によって明らかな違いを見せたのが、『新聞記者』だった。「朝日」は一番写真が大きくなる「プレミアシート」に持ってきた。「毎日」は「時代の目」という左上の欄だが、注目度は高い。「読売」は大枠ではなく短行4本のうちの2番目で、「日経」も短行5本の5番目。

映画についての私の感想はここに既に書いたが、東京新聞の望月衣塑子記者の著書『新聞記者』を原作としたもので、明らかに安倍政権を批判する内容だ。もともと反安倍の「朝日」と「毎日」が大きく、保守的な「日経」と親安倍の「読売」の扱いが小さいのは、わかりやすい。

しかし映画評を書く欄は文化面であり、通常は会社の政治的方向とはあまり関りがないはず。そこで文章の細部を追ってみた。「朝日」で書いているのは「朝日」OBの秋山登氏だが、最初に日本の報道の自由度が下がった話から始まり、「これは現代日本の政治やメディアにまつわる危機的状況を描いた作品である。日本映画久々の本格的社会派作品として珍重に値する」

「その脚本がいい」「瑕瑾がないわけではないが、藤井の演出、シム、松坂らの好演が補って余りある。/しかし最も高く評価すべきはスタッフ、キャストの意欲と勇気と活力だろう」と大絶賛。

毎日は「果敢な挑戦である」としながらも「ただ、内調の描写を誇張する一方、報道機関の内実は描き込み不足」と書くのは映画担当の勝田友己記者。

「日経」は「官邸政治の闇に切り込む勇気に敬服し、共感もする。ただ映画としては弱い」とかなり否定的に古賀重樹記者が書いて2点。「読売」も「権力の闇について考えさせるところもあるが、「取材源の秘匿」という重要な倫理が軽んじられているのが残念」と田中誠記者。

扱いの大きさは違っても映画としては欠点を含みつつも、この題材によく切り込んだという点では一致する。実はネットの「映画ナタリー」で「朝日」の石飛徳樹、「毎日」の鈴木隆、「時事」の小菅昭彦の3記者(私と同世代の酒飲みおやじ)がこの映画について語った座談会「新聞記者が語る映画『新聞記者』」がある。鈴木、小菅の両氏はこうした映画が製作されたことを称賛しながらも、映画の出来についてはいささか留保がある。

「朝日」の石飛記者だけが「全面的に支持したい」「エンタメ作品として合格点に達している」と手放しの絶賛なのは、OBの秋山氏と同じ。やはり「朝日」体質は文化部にもめんめんと引き継がれているのだろうか。16年勤めた私にもあるかも。

『新聞記者』の動員は最初の土日で10位。143スクリーンだし、『アラジン』『スパイダーマン』『ゴジラ』などが並んでいる中では健闘だが、もう少し行ってほしい。座談会で3人が口を揃えていたように、これが当たればこうした現実の政治を扱う映画が増えるから。

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