「高畑勲展」から日本画へ
東京国立近代美術館で始まったばかりの「高畑勲展」を見た。10月6日までの開催だが、自宅から近いので原稿で行き詰った週末にふいと見に行った。いくらジブリとは言っても、高畑勲ではそれほど観客はいないだろうと思ったが、大間違い。
始まったばかりなのに、会場は若い男女から中年までかなり混んでいる。さすがに70歳以上はいない感じだが、私のような50代ならかなりいる。中学生や高校生もいるのに驚く。
東京都現代美術館や国立新美術館はともかく、東京国立近代美術館での漫画やアニメの展覧会は珍しい。たぶん30年ほど前の手塚治虫展以来ではないか。さてどう見せるかと期待したが、意外にオーソドックスだった。つまりは絵コンテ、原画、メモ、映像の一部、写真などである。
しかしそれがかなり凝っている。例えば最初のあたりに高畑が東映アニメーションで座っていたような机とその周りが展示されていて、まわりに当時の写真が拡大されている。ちょうどNHK朝ドラの「なつぞら」で描かれる世界(見ていないが)なので、観客も多いのだろう。
おもしろかったのは、1960年前後に書かれた「ぼくらのかぐや姫」という10ページほどの制作メモが公開されていたこと。つまり『かぐや姫の物語』は50年も前から構想されていたことになる。
これは文字ばかりだが、もともと高畑は自分で絵を描かないことで知られる。それでは何を展示するかと言えば、関わったアニメーターや美術監督の絵コンテを作品ごとに展示している。宮崎駿、小田部羊一、近藤喜文、男鹿和雄などの絵コンテや背景画、レイアウトなどが並ぶ。そこに高畑の手書きの企画ノートが加わる。
個人的には、『おもひでぽろぽろ』以降の日本を描いたものが気になる。とりわけ『ホーホケキョ となりの山田くん』から『かぐや姫の物語』にかけての省略技法というのか、あえて描かないで余白を残す画面に惹かれる。『かぐや姫の物語』については、できあがった作品も原画もかなりたっぷり見せていて満足した。
見終わって4階に行き、常設展を軽く見た。最初に尾竹国観や菊池契月の屏風絵が現れたが、それらはすべて『かぐや姫の物語』とつながっているようにしか見えない。後年日本美術に近づいた高畑勲の目を通じて、日本近代美術史を見ているような気分になった。こちらはガラガラだが、高畑展を見たら無料で見られるのにもったいない。
| 固定リンク
「文化・芸術」カテゴリの記事
- 「アンチ・アクション」展の持つ意味(2026.01.18)
- 年末に見た写真展(2026.01.10)
- 宮下規久朗『戦争の美術史』を読む(2025.12.21)
- アーティゾン美術館はもはや現代美術館(2025.11.25)
「映画」カテゴリの記事
- 『ウォーフェア』の見せる戦争(2026.02.11)
- 『恋愛裁判』の安定感(2026.02.07)
- またアメリカの実験映画を見る(2026.02.03)
- 「構造映画」を見る(2026.01.28)


コメント