『ホットギミック』を最後まで見る
山戸結希監督の『ホットギミック ガールミーツボーイ』をガラガラの劇場で見た。監督の名前は前から聞いていたし、昨年はオムニバス映画『21世紀の女の子』のプロデュースでも話題になった。
少し年下の女性の友人は、「山戸結希は、令和の河瀬直美と命名します。(たいして良いと思えない)センスの押し売りに見る方が疲れます。ちょうど河瀨直美が日本らしさを狙うように、今の女の子らしさを前面に押し出して」とメールで書いてきた。
ところが同じく少し下の男性の友人は「またすぐ見返したくなるくらい、本当にいい映画でした」「山戸さんの出現によって、女子高生を中心とした少女青春映画を撮る僕ら男性監督たちの映像世界は、(いい意味で)更新されてしまった」とSNSに書いた。
これは見なくてはと思った。結果は、女性の反応に近い。というより、それは河瀨さんに失礼だろうと思った。私は始まって30分ほどで耐え切れなくなって、何度も途中で出ようと思った。これほど出たいと思った映画は何年ぶりだろうか。結局119分、耐えに耐えて最後まで見た。
最後まで見たのは、見ているうちに学生の作る作品をいくつも思い出したから。『ホットギミック』は、現在の映画監督を目指す大学生の一部(とりわけ女子)が理想としている完成形に見えてきた。
豊洲や渋谷の現代的な風景をバックに、はしゃぐ若者たちを見せる。あえて人物だけに焦点を当てて風景をぼかす。心象風景のように遠景を見せる。カメラを大きくパンしたり移動させて長回しする。手前に車の往来を入れてズームで男女を撮るような、細工を凝らす。つぶやきのような声を入れる。文字を入れる。写真をあちこちに散りばめる。たえず聞きなれた心地よい音楽を流す。
そしてしばしば女子学生が描こうとするのは、夢に満ちた高校生の世界。高校生同志の男女をめぐる衝突。親や姉妹のいざこざ。つまり『ホットギミック』はある種の「現代の映像」の代表選手なのかもしれない。
私は累計450万部を超す原作も読んでいない。主人公の成田初を演じる乃木坂46の堀未央奈も誰のことかわからない。そんな私には、そもそもちんぷんかんぷんなのかも。
そんな私が気になったのは豊洲の風景。私は90年代の前半、そこに住んでいた。そのころはあの未来的風景は全くなかったが、なぜか嬉しかった。もう一つよかったのは、格安チケット売り場で買った800円の東映株主優待券で見られたこと。800円ならば、いい体験だった。
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