『よこがお』の波紋
7月26日公開の深田晃司監督『よこがお』を見た。見終わって、なぜかよくわからないのに、心の波紋は大きかった。別に難しい映画ではない。ある女性が事件に巻き込まれて、その復讐を果たす話である。
復讐をする主人公を演じるのは筒井真理子で、彼女がリサという名で最初に出てきた時から見ていて落ち着かない感じがした。美容室で和道(池松壮亮)と出会い、仲良くなる。
それから彼女が「市子」という別名で介護の仕事をしている様子が写る。彼女の担当の家の一つで、老婆は家族よりも市子の言葉に反応して体を動かすほど信頼されている。その孫娘・基子(市川実日子)は介護の勉強をしており、市子に教えてもらっている。そんなある日、市子は甥の辰雄を基子やその妹のサキに紹介する機会があり、そこから事件が動き始めた。
何を考えているかわからない、ぼんやりとした感じの筒井真理子と、キリキリと追い詰められた感じの市川実日子の会話が生きている。実際は市川演じる基子のせいで事件が大きくなるのだが、その理由がどうもピンと来ない。
市子は全く悪くないのに、いつの間にかマスコミが騒ぐ大事件になっている。市子が何を考えているのか、どこか見えないままに、落ち着かない雰囲気は増大してゆく。
周囲の小さな音が気になりだす。マンションのベルを鳴らす音や電話の音、道路の信号や車のクラクションが異様に鳴り響き、不穏さは終盤に極点に達する。最後の最後まで、どう終わるのか読めない。
見終わると、ふーっとため息をついた。とにかく見ごたえがあった。確かなのは、これはもう一度見ないとわからないということだ。深田晃司監督は、一作ごとに新たな境地を見せてくれる。カンヌに出なかったのは惜しいが、この映画はいずれ海外で大きな話題になるだろう。
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