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2019年8月10日 (土)

『おしえて! ドクタールース』の楽しさ

8月30日公開のライアン・ホワイト監督『おしえて! ドクタールース』は、暑い日にちょっと爽やかな気分になれるドキュメンタリーだった。前にもここに書いたように、ドキュメンタリーはおもしろい人物を見つけてうまく撮影できたら「勝ち」である。

「ドクタールース」は、90歳のセックス・セラピスト。テレビであらゆる相談に明るくあけすけに答えるので有名だ。「ノーマルなんてない」「大人の2人が合意して行うことならなんでもOK」と答えは明快なうえに、ユーモアに満ちている。

しかしそれだけならば、10分で終わってしまう。これが100分間楽しめるのは、彼女の波乱万丈の人生が語られるから。1928年にドイツのユダヤ人家庭に生まれ、10歳の時に両親は強制収容所に送られて、自分はスイスで集団生活。

1945年には建国したばかりのイスラエルに送られる。そこでイスラエル兵の活動を守るスナイパーになり、20歳を過ぎて軍人と結婚。夫が医学を勉強するためにパリに行くので同行し、自分は心理学を学ぶ。それが面白すぎて、帰国する夫と別れてパリに滞在。そこで2人目の夫と出会い、教育賠償金を手にしてニューヨークに渡るのが1956年、28歳の時。

夫と別れてシングルマザーで娘を育てている時に、3番目の夫、フレッドと出会う。そこで余裕ができてコロンビア大学で学び、40歳で社会学の博士号を取る。さらにコーネル大学でセックス・セラピストのヘレン・シンガー・カプランに学ぶ。1981年に取材を受けたのがきっかけで、日曜深夜12時からのラジオ番組「Sexually Speaking」を始めて大ブレイク。「おしえて!ドクタールース」というテレビ番組を持つまでになった。

途中から、彼女のユーモア溢れる回答が、実は計算し尽くされたものだと気がつく。相手を思いやりながらも、明快でかつみんなが楽しくなる内容だ。時々は自分をバカにする。政治の話はしない。それらは彼女の苦難だらけの人生から学んだことなのだろう。彼女の子供や孫がまっとうな発言をするのを見ても、その生き方はよくわかる。

一つだけ残念なのは、幼少期がアニメで語られること。写真も少ないだろうが、そこまでわかりやすくする必要はなかったかもしれない。

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